荒部 好

『素顔のスターダンサーたち』

  ウラジーミル・マラーホフはウクライナ、アルヘン・コレーラがマドリッド、ホセ・ カレーニョはキューバ、イーサン・スティフェルはペンシルバニアとそれぞれ生まれ 故郷も祖国も違う、4人のアメリカン・バレエ・シアター(ABT)のバレエダンサー。こ の4人のスターを一堂に集めて、コンテンポラリー・ダンスの振付家マーク・モリスが 作品を創る。そのダンスができあがるプロセスのドキュメンタリーの中で、それぞれの ダンサーたちのこころの中を訪ねる。

  なかなかおもしろい発想で創られた映像である。共通しているのは、4人とも天性のダン サー、踊るために生れてきた人たちなのである。
  10歳でウクライナからモスクワにたった一人ででてきて、バレエ学校で生活したマラー ホフと彼の母の濃密な物語。マラーホフは自分の子どもには同じような想いはさせたくない 、とまで言う。そして、辛い想いをして卒業したが、ボリショイ劇場の芸術監督グリゴロー ヴィチの不可解な態度にさらに苦悩する。
  カレーニョがすごしたキューバの貧しかった時代の思い出、マドリッドで孤独な少年時代 をおくったコレーラ、スティーフェルの看守だった父と家族の交流の思い出……。

  今日の花やかなスターダンサーの表情からは、とてもうかがえないような幼い頃の物語がつ ぎつぎと語られていく。しかし、環境は全く異なるのに、彼ら4人はバレエを捨てなかった、 それどころかダンサーとしての大きな成功を勝ち取った。つまり、彼らにはそうした才能を 花開かせる力が具わっていた、それを天性のダンサーと言うのかもしれない。
  そして、4人のために振付けたマーク・モリスの作品は完成。素晴らしいダンスの映像も 収録されている。

『素顔のスターダンサーたち』
TDKコア
DVD/4,000円(税抜)