荒部 好

『ラ・バヤデール』ミラノ・スカラ座バレエ団

 ミラノ・スカラ座バレエ団が、ボリショイ・バレエ団のスヴェトラーナ・ザハロワをゲストに招いて上演した『ラ・バヤデール』である。
キーロフ・バレエ団からヨーロッパに亡命したナタリア・マカロワが、振付けた舞台。周知のように、マカロワ版は省略されることの多い、最後の寺院崩壊のシーンを復活させている。プティパが初演した時は、この屋台崩しは、単にスペクタクルとして天罰が下る、ということだけではなく、寺院が崩壊した後に、神が姿を現す、宗教的な荘厳さを表すシーンだった。
  マカロワ版では寺院崩壊の後に、ニキヤの精霊に導かれたソロルが登場し、天国で二人が結ばれることを示す、という演出になっている。
  やはり、ニキヤを踊ったザハロワのスレンダーな姿体の美しさが最も印象的である。ザハロワは、ソロルとガムザッティの婚約の祝いの席で、ニキヤが踊るシーンでは、感情のゆらぎを踊りの中に見事に表現している。
これまでのザハロワは、『白鳥の湖』のオデットのような、悲劇的なラインを美しく描くことでは定評があったが、ヴィヴィットな感情表現を踊りに映すという点ではあまり高い評価を受けていなかった。しかし、このDVDを見ると、報いられることのない愛を明解な身体表現によって、くっきりと浮かび上がらせている。
  ソロルを踊ったロベルト・ボッレも、ザハロワの熱い演技に応えて落ち着いた舞台を見せている。長身のカップルによるなかなか見応えのある『ラ・バヤデール』だった。

 


 

振付/ナタリア・マカロワ、音楽/レオン・ミンクス
スヴェトラーナ・ザハロワ、ロベルト・ボッレ、ミラノ・スカラ座バレエ団

ミラノ・スカラ座バレエ団
『ラ・バヤデール(全3幕)』
発売:TDK
¥5,040 (本体価格¥4,800)