荒部 好

『ムラーダ』リムスキー=コルサコフ オペラ・バレエ

『ムラーダ』は、当初、ロシアの国民主義の音楽の確立を目指す<五人組>(バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ、ボロディン)の共同作品として構想された。しかしその計画は実現せず、1892年、リムスキー=コルサコフの台本と作曲により、オペラ・バレエ『ムラーダ』はペテルブルクで初演された。

 リムスキー=コルサコフは、当時、ペテルブルクでドイツ歌劇団が上演したワーグナーの『ニーベルングの指輪』に深く影響を受け、その後はオペラの作曲を中心に仕事をするようになった。『ムラーダ』にも大掛かりな管弦楽や楽劇風の場面など、ワーグナーの影響が見受けられる。
 初演の際、振付はレフ・イワノフとエンリコ・チェケッティが担当、作曲家ストラヴィンスキーの父、フョードル・ストラヴィンスキーがムスティウォイ王に扮し、マリウス・プティパの娘マリア・プティパがムラーダを踊っている。

 このディスクに収められているのは、1995年に芸術監督となったワシーリエフ(既に退任)により、100年ぶりにモスクワのボリショイ劇場で上演されたオペラ・バレエ『ムラーダ』である。演出は偉大な演出家、ボリス・ポクロフスキー。振付はボリショイ・バレエ出身のアンドレ・ペトロフである。
 ムラーダ姫をたおやかに踊っているのは、グルジア出身のボリショイ・バレエのプリンシパル・ダンサーにして世界のプリマ・バレリーナである、ニーナ・アナニアシヴィリである。
 ポクロフスキーの演出では、スラヴ民族の神話的な世界が異教的儀式などにより、鮮烈に描かれている。それは、リムスキー・コルサコフに師事していたストラヴィンスキーの傑作『春の祭典』を想起させるもの。



音楽・台本/ニコライ・リムスキー=コルサコフ
原作/ヴィクトル・クルィローフ
演出/ボリス・ポクロフスキー
美術/ワレリー・レヴェンターリ
振付/アンドレイ・ペトロフ

ムラーダ姫/ニーナ・アナニアシヴィリ
ヤロミール王子/オレグ・グリコ
ヴォイスワラ姫/マリヤ・ガウリーロワ
ムスティウォイ王/グレブ・ニコリスキー
モレーナ/ガリーナ・ボリンワ

ボリショイ・オペラ
ボリショイ・バレエ
『ムラーダ』
ワーナーミュージックジャパン
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