『真夏の夜の夢』ABT

 芝居の天才シェイクスピアの傑作『真夏の夜の夢』を、同じ英国のダンスの名人フレディリック・アシュトンが絶妙のタッチで一幕物のバレエに仕立てた。

目覚めて最初に見た生き物に惚れる、という霊験あらたかな媚薬を駆使して、恋の愚かさ、ひいては人間のたわいのなさ、目くじら立てて罵り合うことの虚しさをユーモラスに優しく、時にアイロニーを利かせて癒してくれる。この上なく楽しい極上の作品である。

人間が妖精と渾然と暮している姿がなんとも微笑ましい。媚薬で見た夢は単なる幻想ではなく、じつはこころの裏側に潜む本人が気付いていないイメージではないか、と観客も気付かないうちに思わされているところがこの作品にはあるかもしれない。

ともあれ、妖精の王オーベロンを踊ったイーサン・スティーフェルとパックのエルマン・コルネホが素晴らしい。イーサンは本物の妖精を見ているような錯覚を覚えさせるような演技とダンスだった。とりわけ冒頭と終盤のフェリとのパ・ド・ドゥは秀逸である。アルゼンチン出身のコルネホのパックも良かった。妖精の悪戯心を踊りの中でうまく表現した魅力溢れるダンスだった。このふたりは来日公演でも踊るから今から楽しみである。

フェリはもちろん、フェリならではのコケティッシュな可愛らしいタイターニアを美しく踊った。アシュトン作品の良さを生かしたアメリカン・バレエ・シアターの素敵な舞台である。


アメリカン・バレエ・シアター
出演:アレッサンドラ・フェリ/イーサン・スティーフェル/エルマン・コルネホ/フリオ・ブラガード・ヤング

The Dream
『真夏の夜の夢』
アメリカン・バレエ・シアター
発売元:TDKコア
\5,040 (本体価格\4,800)