荒部 好

『白鳥の湖』キーロフ・バレエ

 11月末には、3年ぶりにマリインスキー・バレエ団が来日する。今回の来日公演でもここに収められたものと同じセルゲイエフ版『白鳥の湖』が上演される。
 このヴァージョンは、道化が狂言回しとして登場し、闊達な踊りを披露しながら物語全体の流れをリードしていく。そのエネルギッシュな踊りが反って、結婚して国を治めなければならない、という青春の終焉を迎える王子ジークフリートの憂鬱な胸中を浮き彫りにする。そういう演出となっている。
 このDVDは1990年に収録されている。オデット、オディールは、サンクトペテルブルク生れで古典バレエを華やかに踊り、人気を集めたユーリヤ・マハリーナである。王子ジークフリートは、イーゴリ・ゼレンスキーが踊っている。
 ゼレンスキーはトビリシ出身で、この地のバレエ学校でかつてキーロフ・バレエ団で男性舞踊手として名を成したワフタング・チャブキアーニに師事している。その後、ワガノワ・バレエ・アカデミーに移り、1988年にキーロフ・バレエ団に入団した。したがって、入団2年後に早くもジークフリートをプリマバレリーナと共演していることになる。もっともゼレンスキーは、1990年のパリ国際バレエ・コンクールでゴールドメダルとグランプリを獲得しているので、当然のキャスティングだったのかもしれない。
 また、ゼレンスキーは92年から97年までニューヨーク・シティ・バレエでゲスト出演し、その後はロイヤル・バレエでもゲスト・プリンシパルを務めている。ジョルジュ・ドンやファルフ・ルジマトフは、ニューヨーク・シティ・バレエの水が合わずに戻ってきてしまったが、ゼレンスキーは5年間無事にNYCBのステージをこなした。
 そして現在はルジマトフとともに、マリインスキー・バレエ団の押しも押されもせぬ男性ダンサーの最高位にいる。
 今回の来日公演では、オデット、オディールに扮するロパートキナと王子ジークフリートを踊る予定である。このDVDを観て、来日公演の舞台を観れば、ゼレンスキーがアメリカや英国のバレエ団で踊ってどのような成果を得たか、分かるかも知れない。



キーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)
『白鳥の湖』
音楽/ピーター・イリイチ・チャイコフスキー
振付/マリウス・プティパおよびレフ・イワノフ
改訂/コンスタンチン・セルゲイエフ

オデット、オディール/ユーリヤ・マハーリナ
王子ジークフリート/イーゴリ・ゼレンスキー
悪魔/エリダール・アリーエフ
道化/ユーリ・ファテ-エフ

キーロフ・バレエ
『白鳥の湖』全3幕
ワーナーミュージックジャパン
¥4,900 (本体価格¥4,667 )