荒部 好

『くるみ割り人形』K バレエ カンパニー

 熊川哲也版『くるみ割り人形』は、チャイコフスキーの名曲のメロディに潜む美しい子どもの心と、原作のE.T.A.ホフマンの神秘的な魅力と、プティパとイワノフの素敵なダンスを見事に総合した素晴らしい舞台である。
 人形の国のマリー姫が醜いねずみ顔に、婚約者の近衛兵隊長がくるみ割り人形に、ねずみの王の呪いによって変えられるプロローグから、クリスマスツリーが巨大化した後のくるみ割り人形とねずみ軍の激しい戦い、純白の雪の国の女王と王の歓迎、人形の国でマリー姫とくるみ割り人形が呪いを解かれて、結婚の祝宴が開かれるまで、わくわくするような息もつかせぬ展開を見せる。
 とりわけ、ソナベンドとトラヴァースのふくろうをあしらった大時計やクリスマスツリー、人形の国の造型、シュタールバウム家の大広間など数々の優れたアイディアによる舞台美術と、心のこもったダンスのコラボレーションが子どものメランコリーな世界を鮮やかに描く。
 熊川哲也の近衛兵隊長の凛々しい姿と鮮烈なダンスのライン、マリー姫を美しく踊った康村和恵、純粋な少女の健気な心を踊った中平絢子、クララを優しくいたわりながら冷静に計画を進めたドロッセルマイヤーのスチュワート・キャシディ。それぞれのキャストが存分に力を発揮した見応えのある『くるみ割り人形』である。


演出・再振付/熊川哲也
音楽/ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
舞台美術・衣裳/ヨランダ・ソナベンド、レズリー・トラヴァース

K バレエカンパニー
『くるみ割り人形』
DVD/VHS
\8,190 (本体価格\7,800)