荒部 好

『クラヴィーゴ』パリ・オペラ座バレエ

『クラヴィーゴ』は、1999年にパリ・オペラ座にローラン・プティが振付けた作品である。プティは、ゲーテの同名の戯曲に触発されてこの舞台を創ったが、ゲーテは、オペラ『フィガロの結婚』の作者ボーマルシェの回想録に書かれていた実際の事件に基づいて戯曲を完成させている。愛に奔放な一人の青年が、周囲の誘惑と戦いながらも敗れ、破滅していく悲劇を描いている。

 バレエの見所は、もちろん、主人公のクラヴィーゴに扮するル・リッシュの圧巻のダンスである。引き締まった見事な身体と機敏で表情ゆたかな動きのライン。パリ・オペラ座男性ダンサーの頂点に君臨する活力あふれるダンスは、観客をぐいぐいと物語の世界に引き込んでいく。とりわけ、血にまみれたラスト・シーンのソロは白眉である。ほとんどこの作品を一人で背負っている、といっても過言ではない活躍ぶりである。
 とはいえ、実生活ではル・リッシュ夫人であるクレールマリ・オスタも、クラヴィーゴに愛を捧げるマリーのピュアな精神を的確に演じている。マリー自身の夢の中とクラヴィーゴの幻想の中で、ル・リッシュとコントラストを際立たせたパ・ド・ドゥを鮮やかに踊っている。クラヴィーゴを非情に誘惑する妖艶な女に扮するマリ=アニエス・ジローも、ル・リッシュに臆することなく堂々と演じ、踊っている。

 プティが牧阿佐美バレエ団に振付けた『デューク・エリントン・バレエ』や、同じくプティ振付のボリショイ・バレエ『スペードの女王』などの装置を創った、建築家のジャン・ミッシェル・ヴィルモットの鋭いモダン感覚の装置が美しく、独特の情感を感じさせる舞台である。音楽は、『トロイ』や『抱擁』などの映画音楽で知られるガブリエル・ヤレド。



振付/ローラン・プティ
出演/ニコラ・ル・リッシュ、クレールマリ・オスタ、マリ=アニエス・ジロー、ヤン・ブリタール、ヤン・サイズほか

パリ・オペラ座バレエ
『クラヴィーゴ』
¥5,040 (本体価格¥4,800)
発売:TDKコア