荒部 好

『エスメラルダ』全3幕 レニングラード国立バレエ団

『エスメラルダ』は、ヴィクトル・ユーゴーの長編歴史小説『ノートルダム・ド・パリ』に基づいて振付けられたバレエである。
『ジゼル』の振付などで知られるジュール・ペローが、大部の原作の中から、主人公のエスメラルダをめぐる男たちの物語を中心とした台本を書いている。1844年、ペローの振付、プーニの音楽、名花カルロッタ・グリジの主演で、ロンドン王立劇場で初演され、大いに人気を集めた。その後もファニー・エルスラーなどの有名なバレリーナが踊って評判になっている。
 ロシアでは、マリウス・プティパがマリインスキー劇場のプリマ、マチルダ・クセシンスカヤのために振付けている。
 その他にも1935年のアグリッピーナ・ワガノワや1950年のウラジーミル・ブルメイスティルなどが振付けている。また、1965年にローラン・プティが振付けた『ノートルダム・ド・パリ』も同じ原作だが、物語の展開は異なっている。
 ここに収められたヴァージョンは、レニングラード国立バレエ団の芸術監督、ニコライ・ボヤルチコフが改訂演出している。ボヤルチコフは制作にあたって、30年代にマリインスキー劇場で活躍したプリマ、タチアナ・ヴェスチェスロワや、キーロフやマールイ、ノボシビルスクなどでバレエ・マスターを務めたピヨトール・グーセフなど、革命以前のロシア・バレエを知る舞踊家の意見を聞いて、原点の復元を試みた。そして、当時の雰囲気を感じさせる演出に成功している。
 しかし原典に依拠しているので、ワガノワの振付で良く知られる「ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥ」や、「エスメラルダのヴァリエーション」などの踊りは、ここには含まれていない。
 エスメラルダを踊ったレニングラード国立バレエ団のハビブリナは、カザンの出身。エスメラルダ悲劇的な運命を情熱を込めて踊っている。
 クラシック・バレエの美しさのひとつの典型を表した味わい深い舞台である。

原作/ヴィクトル・ユーゴー、
音楽/チェザーレ・プー二、
台本/ジュール・ペロー、
演出・振付/ジュール・ペロー、マリウス・プティパ、
改訂演出/ニコライ・ボヤルチコフ、指揮/アンドレイ・アニハーノフ、
演奏/レングラード国立歌劇場管弦楽団 エスメラルダ/エルビラ・ハビブリナ、フェブ隊長/キリル・ミャスニコフ、詩人グレンゴワール/アンドレイ・クリギン、司祭フロロ/アレクセイ・コンスタンティノフ、鐘つきカジモド/アンドレイ・ブレグバーゼ、レニングラード国立バレエ団
 


レニングラード国立バレエ団
『エスメラルダ』 全3幕
1994年収録、約60分
発売/TDKコア
3,990円 (本体価格3,800円)