荒部 好

『アパルトマン』パリ・オペラ座バレエ


 パリ・オペラ座の舞台に、緞帳のフェイクで区切った空間を作り、何景かの日常生活のスケッチをダンスで描く。

 冒頭からビデが登場して驚くが、パリではごく日常的な光景である。ビデと女性というとややあざといが、マリ=アニエス・ジローが踊るとエンターテインメントとして楽しめる。この辺がオペラ座のダンサーの上手さで、これがそのままあざとく見えてしまっては、オペラ座で踊っていくことはできない。

 フェイクの緞帳が上がるとつぎつぎに、アパートメントのスケッチが顔をだす。だらしなくソファに伸びてテレビを見るともなく見ているのは、ジョゼ・マルティネス。すらりとした見事な身体を衣裳だ隠すのさえもったいない気がするダンスールノーブルだが、案外、彼の日常生活はこんなふうだったりするのかもしれない。

 そうした個室の空間とはまた異なって、歩行者たちも踊られる。アパートメントの中でプライヴェートは別だが、公共空間を共有している人たちとの微妙な関係。こういう観察はいかにもエクらしく、ダンスもおもしらかった。

 ほかにも夫婦だか同棲生活だかのもろもろの描写もちょっと皮肉が利いていておもしろい。

 マッツ・エックが芸術的野心を控えて、オペラ座のダンサーの生活を観察しているうちに発想したかのような、エンタテインメントふうにこしらえた興味津々の映像である。




振付/マッツ・エック
出演/クレマリー・オスタ、カデル・ベラルビ、ニコラ・ル・リッシュ、ジョゼ・マルティネス、マリ=アニエス・ジローほか

パリ・オペラ座バレエ
『アパルトマン』
¥5,040 (本体価格¥4,800)
発売:TDKコア