(荒部 好)

『CARAVAGGIO』(カラヴァッジョ)ベルリン国立歌劇場バレエ団

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西洋美術を革命的に発展させたバロックの天才画家、カラヴァッジョをテーマとして、イタリアの気鋭の振付家、マウロ・ビゴンゼッティが振付け、マラーホフが主演した新作『カラヴァッジョ』。昨年12月にベルリン国立歌劇場で世界初演された、この注目の舞台がDVDとなって発売された。

カラヴァッジョは17世紀初頭、ローマなどで活躍した天才画家で、劇的な光と闇の効果、繊細綿密な細部描写による豊かな質感などにより、芸術と宗教の力が一体となった聖なるヴィジョンを創り、「ロレートの聖母」「聖マタイの招命」などの傑作を描いた。
しかし、その人生は絵画制作の非妥協的完全主義による軋轢だけではなく、放蕩や犯罪による事件が多く、ついには殺人まで犯してローマを逃亡した。イタリアの通貨リラに顔が描かれたほどバロック絵画の傑作を残しているが、売春婦をいくつかの聖母マリアのモデルにしたなどとも伝えられ、聖と俗を往還する人生を送った人物である。
日本では、1986年公開のデレク・ジャーマンの映画『カラヴァッジョ』でよく知られるようになり、2001年に東京都庭園美術館で行われた「カラヴァッジョ展」が人気を集めた。

マウロ・ビゴンゼッティは、近年注目を集めるイタリア人振付家で、昨年夏の<エトワール・ガラ>の『カンツォーニ』(アッバニャート、ペッシュ)、今年1月の<奇才コールプの世界>のロシア・アヴァンギャルドの画家カジミール・マレーヴィチを主題とした『カジミールの色』(カリッロ・カブレラ、カニスキン)の2作品が日本の最近の舞台では踊られている。
ビゴンゼッティは天才画家のバロック絵画の芸術の世界と同時に、破天荒なカラヴァッジョの人生からインスピレーションを得た、という。しかしもちろん、ビゴンゼッティの『カラヴァッジョ』は、時系列的に画家の生涯を辿ったものではない。
冒頭はカラヴァッジョに扮するマラーホフのソロ。本名をミケランジェロ・メリージというが、生涯にわたり出身地のカラヴァッジョを名前とした。そして幼い頃に母を失い、13歳で修行の道に入った天才画家の繊細にして複雑な感情が絡み合う心を、マラーホフの踊りが時に切なく喘ぐように、時には激しく怒るように訴える。淡い金色が光り輝くような照明が、現実との調和に苦しむ幼子のような魂を宗教的な厳かな雰囲気の中に浮かび上がらせる。
そして、光、闇、聖、人生、信頼、好奇心などのカラヴァッジョの存在に関わった様々なエレメントが、マラーホフ=カラヴァッジョと様々な局面を描きながら踊られていく。身も心もカラヴァッジョになりきったマラーホフのダンスには、凄絶にも感じられる迫力がある。
特に、終盤の殺人者としての刻印がカラヴァッジョの心に刻み込まれるようなシーンが、厳しく痛々しいまでの情感をもって観客に迫る。
「光」を踊ったポリーナ・セミオノワが美しく、カラヴァッジョの悲惨な人生の光景の中に輝く希望の星のように感じられてすばらしかった。
天才カラヴァッジョの傑作絵画を観た上で、このDVDに没入することをお勧めしたい。
「メイキング・カラヴァッジョ」(日本語字幕付き。ビゴンゼッティがカッコいい)「フォトギャラリー」などの手厚い特典映像が付いている。

『CARAVAGGIO』(カラヴァッジョ)
振付/マウロ・ビゴンゼッティ
音楽/クラウディオ・モンティヴェルディに基づきブルーノ・モレッティ
美術、照明/カルロ・チェッリ
衣裳/クリストファー・ミラー、ロイス・スワンダル
出演/ウラジミール・マラーホフ、ポリーナ・セミオノワ、ベアトリス・クノップ、ミハイル・カニスキン、ドミトリー・セミオノフ、エリサ・カリッロ・カブレラ、中村祥子、ミヒャエル・バンジャフ、レオナルド・ヤコヴィナ
ベルリン国立歌劇場バレエ団

収録時間:119分(本編90分+ボーナス映像29分)
音声:ステレオ2.0/ドルビー・デジタル5.1サラウンド
(Blu-Ray ステレオ2.0/dts-HD Masterサラウンド5.1)
字幕(ボーナスのみ):英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ルーマニア語
画面:16:9
REGION All(Code:0)
片面2層ディスク
(Blu-ray・・・単層25GB)

2009年8月26日発売予定 オープン価格