(荒部 好)

『白鳥の湖』グレアム・マーフィー版 全4幕 オーストラリア・バレエ団

1009dvd.jpg

10月に来日して上演される、オーストラリア・バレエ団のグレアム・マーフィー版『白鳥の湖』のDVDが刊行された。
グレアム・マーフィーはシドニー・ダンス・カンパニーの芸術監督時代から、大胆な演出・振付けをすることで知られている。
ここの収められた『白鳥の湖』も、英国王室のダイアナ妃の置かれた立場を想定して、古典名作の物語を換骨奪胎している。その手際はなかなか鮮やかで、オリジナルの『白鳥の湖』のロットバルトをジークフリード王子の愛人、ロットバルト男爵夫人とし、オデットと王子をめぐって三角関係を設定している。単純に言って、チャールズ皇太子とダイアナ妃とカミラ夫人の関係を暗示と言うか示唆しているのであろう。
マーフィーは、この作品を初演する際に、振付の進捗が思わしくなかったので、ダンサーたちにこの現実の人物たちの名前を伝えたら、いっぺんに進行がはやまった、とインタビューで興味深いエピソードを明かしている。
しかし、そうした設定云々ということよりも、全4幕ほとんどマイムシーンなしで踊りっぱなしの振付が圧巻である。
コントラストを利かせた抽象的装置、渦を巻いて流れるような大胆なコール・ド・バレエのフォーメーション、そしてバレエの動きに独特のアクセントを付けて、マーフィーのヴァージョンらしいニュアンスを出す振りなど、感心させられる点の非常に多い作品である。
オデットを踊ったマドレーヌ・イーストーは健闘している。第3幕のジークフリートに愛を目覚めさせるところからは、確かな演技力を感じさせる踊りだった。おそらく、来日してオデットを踊ると思われる。ジークフリートのロバート・カラン、ロットバルト男爵夫人のダニエル・ロウも新しい役どころをしっかりと演じ、踊っている。来日公演が楽しみである。

オーストラリア・バレエ団
『白鳥の湖』グレアム・マーフィー版 全4幕

コロンビアミュージックエンターテインメント
価格5,040円(税抜き4,800円)