(荒部 好)

プロフェッショナル仕事の流儀
『バレエダンサー 岩田守弘の仕事』悔しさを、情熱に

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ロシアのボリショイ・バレエ団で唯一の外国人ソリスト(旧ソ連を除く)を務める岩田守弘のDVDが刊行された。これは2008年12月にNHK総合テレビで放映されたプロフェッショナル仕事の流儀の『バレエダンサー 岩田守弘の仕事』に、スペシャルトークなどの特典映像を加えたもの。
岩田は、ロシア国立モスクワアカデミー(ボリショイ・バレエ学校)に学んだ後もロシアで踊り、93年にはモスクワの国際バレエ・コンクールで金賞を受賞。その時の審査委員長がウラジーミル・ワシーリエフであったことも機縁となり、ボリショイ・バレエ団の研修生となることができた。そして96年には晴れて唯一の外国人ソリストとして入団を果たす。しかし、テクニックに自信があってもそれ以外の身体的条件などを越えて、主要な役を得るまで、非常に厳しい日々だった。
けれども岩田はその間にもテクニックを磨き、国立劇場芸術大学などで研鑽を積んだ。ボリショイ・バレエが新製作した大作『ファラオの娘』では、誰もが望まなかった着ぐるみを着た猿の役と真剣に取り組んで一部から注目を集めた。
当時をふりかえって岩田は「苦しい時ほど人は成長する。上手くいっている時には人は成長していないものだ」と語っている。

その後は、『白鳥の湖』の道化役や『バヤデルカ』のブロンズ・アイドルなどバレエダンサー岩田守弘の特徴を生かした役が与えられるようになる。
そして、当時芸術監督だったアレクセイ・ラトマンスキー振付の新製作の『明るい小川』のアコーディオン弾きという大役を射止める。
この新しい役の役作りを進めていく過程がじつに興味深い。
まず、歴史的な映像資料にあたり、振付のスタッフと入念に対話を重ねる。もちろん、自分でも様々に取材して想を練っていく。役をもらった喜びの表情から、振付家ラトマンスキーに表現のチェックを受けるまでを映像が追っていて、バレエダンサー岩田守弘の気持ちの流れを、居ながらにして共感することができる。
そのほかにも、年齢を重ねるにつれて身体は衰えるが、成熟してくる表現を生かそうと心がけるなど、ダンサーを啓発するトークが披露されている。
もっとも印象深かった言葉は「踊りを止めるのはどういう時か、それは身体が動かなくなった時ではなくて、やる気が無くなった時だ。僕は身体が動かなくなってもやる気がある間は踊りを止めない」。

プロフェッショナル仕事の流儀『バレエダンサー 岩田守弘の仕事』悔しさを、情熱に
企画・制作:日本放送出版協会
発行・販売:NHKエンタープライズ
本編43分+特典映像29分
3,500円(税抜)