(荒部 好)

『ロミオとジュリエット』K-BALLET COMPANY

熊川哲也版『ロミオとジュリエット』のDVDが発売されている。熊川哲也:演出・振付、音楽はセルゲイ・プロコフィエフ。ロミオは熊川が踊り、ジュリエットには英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル・ダンサー、ロベルタ・マルケスがゲスト出演している。この作品は、2009年にK バレエ カンパニーの10周年記念として制作された。

1411dvd.jpg

多くの作品で同じことが言えるかも知れないが、とりわけ熊川版は、DVDでみると細部の演出や振りが明解に見えてきて、劇場体験とはまたひと味違った作品鑑賞ができて楽しい。
たとえばまず、冒頭はヴェローナの街の広場の階段に腰かけて、ロミオ(熊川哲也)がマンドリンを奏でるシーン。この坐った姿勢からマンドリンを奏でる所作、そして未だ過酷な運命に翻弄されることを知らぬ青年の明るい表情。誰か想いを寄せる人が来るのを待っているよなうな雰囲気が漂っている。ここでは劇場の観客の視点よりもかなり近づいたカメラが捉えてるので、細かい動きや表情、足の位置と置き方などすべてがクリアに見える。舞台全体を見渡す劇場の視点とは違い、様々な登場人物の動きの細部が見えて印象が、いっそう深まってくる。
マンドリンの奏で方、周囲にさりげなく視線を送る様子と顔に浮かぶ柔らかな表情、どれをとっても表現として客体化されているのは当然だが、そのすべてが熊川の表現としての統一感が行き届いていることが、また素晴らしい。さすがに英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルを務めたダンサーというばかりでなく、自身が演出・振付していることもあって、表現が一段と深く、無駄な動きが全然ないので説得力をもっている。それが映像によってはっきり理解できるのである。
マルケス扮するジュリエットの素晴らしさ、ケレン味のなさ、一途の美しさは感動的だ。マルケスのジュリエットの演技にしても、少なくとも私は、映像を見直すたびに新しい発見がある。舞台が優れていれば、その映像が優れているのは当たり前なのだが、それがまた古典作品の奥の深さであろう。

『ロミオとジュリエット』K-BALLET COMPANY
芸術監督/熊川哲也
演出・振付/熊川哲也
音楽/セルゲイ・プロコフィエフ
舞台美術・衣装デザイン/ヨランダ・ソナベンド
製作著作・発売元/TBS、販売元/ポニーキャニオン
税抜7,800円 111分 2009年10月東京公演、Bunkamura オーチャードホールで収録