(荒部 好)

『不思議の国のアリス』(全2幕)英国ロイヤル・バレエ団

クリストファー・ウィールドン振付の英国ロイヤル・バレエ団『不思議の国のアリス』は、2011年2月28日にロイヤル・オペラ・ハウスで世界初演された。
ウィールドンといえば、昨年のABT来日公演のオープニング・ガラでベンジャミン・ブリテンの曲に彼が振付けた『デヴァージョンズ』が上演され、多彩なフォーメーションとスピーディな動きの構成が圧巻だった。これはノンプロットの作品だったが、今回は世界中の人々に良く知られ、特に英国では国民的に親しまれている『不思議の国のアリス』全幕を振付けている。
しかも英国ロイヤル・バレエ団に全幕物の新作バレエが振り付けられるのが、16年ぶりのことだという。ウィールドンには大きなプレッシャーがかかったのではないか、と推測される。しかし、そんな様子はまったくなく、自由自在に超有名なキャラクターたちを存分に動かして奇想天外な想像世界を現出させている。

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ビクトリア朝時代の英国の典型的な家庭の庭で、アリスの一家のティー・パーティーが行われているところから物語が始まる。ローレン・カスパートソンのアリス、アリスを愛するジャックとハートのジャックにはセルゲイ・ポルーニン、原作者で写真家でもあったルイス・キャロルと白ウサギ役はエドワード・ワトソン。アリスの母とハートのクイーンに扮するのはゼナイダ・ヤノウスキーたちが、速いテンポの曲に乗って踊る。
アリスがルイス・キャロルから借りた本を夢中になって読むうちに、深い深い別次元の国へと落下する。そしてそこでは、アリス家に関わる人々がデフォルメされて次々登場するチュシャ猫やフラミンゴ、芋虫などの珍妙なキャラクターたちとともに、奇天烈な騒動を繰り広げる。
音楽は映画音楽の作曲家としても活躍しているジョビー・タルボット。軽快で浮き立つような曲でウィールドンの振付の特徴と非常によくマッチしている。振付は縦横にソリストやコール・ドのダンサーたちを動かして、複雑なフォルムを創っては簡単に崩して目で追いかけるのが間に合わないくらいの展開を見せている。
鮮やかな色彩の衣裳とアイディアを凝らした装置と映像も効果的で、素晴らしいヴィジュアルを創っている。
ヤナウスキーの快演とマジシャンとマッドハンターに扮したスティーヴン・マックレーのタップダンスが、観客に大いに受けていた。
一度見るだけではもったいないような、じつに楽しいバレエ映像の世界である。

『不思議の国のアリス』(全2幕)英国ロイヤル・バレエ団
(直輸入版、日本語字幕無し)
輸入・販売/日本コロムビア株式会社

振付/クリスタファー・ウィールドン、台本/ニコラス・ライト、音楽/ジョビー・タルボット、美術・衣裳/ボブ・クロウリー、バリー・ワーズワース指揮 ヴェント・ガーデン王立管弦楽団。2011年3月、英国ロイヤル・オペラハウスで収録。
出演
アリス=ローラン・カスパートソン、ジャック/ハートのジャック=セルゲイ・ポルーニン、ルイス・キャロル/白ウサギ=エドワード・ワトソン、母/ハートのクイーン=ゼナイダ・ヤノウスキー、マジシャン/マッドハンター=スティーヴン・マックレー、ラジャ/芋虫=エリック・アンダーウッド、公爵夫人=サイモン・ラッセルビー(俳優)、英国ロイヤル・バレエ団