(荒部 好)

『バランシンを振り返る〜歴史的なロシア公演より』ニュ−ヨーク・シティ・バレエ

BRINGING BALANCHINE BACK
NEWYORK CITY BALLET
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ジョージ・バランシンは、ロシアで舞踊家として活動していたが、1924年にドイツへのツアー中にディアギレフに誘われてバレエ・リュスに入った。以後、バランシンが祖国ロシア(ソ連)に帰ったのは38年後の1962 年、ニュ−ヨーク・シティ・バレエ団のソ連公演の時だった。
その後、72年にも訪ソ公演が行われたが、バランシンは83年にアメリカ人として亡くなった。今日では、バランシンの死を客死という人はいないだろう。
そして2003年、バランシンの衣鉢を継いだピーター・マーティンス率いるニュ−ヨーク・シティ・バレエ団が、建都300年のお祝いに沸くサンクトペテルブルクを訪れた。このDVDはそのドキュメントである。

現在のニュ−ヨーク・シティ・バレエ団には、生前のバランシンを知るダンサーは芸術監督のピーター・マーティンスを除けば、ダーシー・キスラーのみ。そのキスラーも来シーズンには引退を決意しているという。
偉大なバランシンの作品のルーツには、マリインスキー劇場のバレエの美が潜んでいる、といわれる。バランシンのバレエを踊るために訓練を重ねたダンサーたちが、その創作の源泉を生んだ劇場へバランシン作品を踊るために訪れる。彼らの若々しい表情に好奇心が動いているのが感じられる。

ワガノワ・バレエ学校の生徒たちが、ニュ−ヨーク・シティ・バレエ団のクラスに初めて参加して、ステップの速いのに驚いている。マリインスキー劇場のバレエをルーツとして、新しく発展を遂げたバレエがその伝統に触れ、お互いを刺激し合って、また新たな可能性を導き出そうとしている。
そして『シンフォニー・イン・スリー・ムヴメント』や『シンフォニー・イン・C』『アゴン』などの舞台を観て興奮を隠そうとしなかったり、『ウェスタン・シンフォニー』を心から楽しむロシアの観客たちの反応もまた、微笑ましく感じられる。
既にアメリカとソ連が激しく対立した冷戦の時代は終り、すべての人々が芸術の新しい喜びを享受する時が進行していることを証明しているようなDVDである。

『バランシンを振り返る〜歴史的なロシア公演より』
ニュ−ヨーク・シティ・バレエ

  • 価格:税込4,900円
  • 収録時間:約90分 2004年、2008年
  • 出演:ピーター・マーティンス、ウェンディ・ウィーラン、ジョック・ソト、マリア・コウロスキー、ダーシー・キスラー、アレクサンドラ・アンサネッリ ニュ−ヨーク・シティ・バレエ団
  • 収録作品:『セレナーデ』『シンフォニー・イン・スリー・ムーヴメント』『インフォニー・イン・C』『グラス・ピース』『アゴン』『ハレルヤ・ジャンクション』『ウエスタン・シンフォニー』