(荒部 好)

『ドン・キホーテ』全3幕 アメリカン・バレエ・シアター

2011年日本公演

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のソリスト、加治屋百合子が人気者のプリンシパルダンサー、ダニール・シムキンとパートナーを組んで踊った『ドン・キホーテ』。2011年のABT日本公演の舞台を収録したDVDが刊行された。
マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキーの原振付に、ABTの芸術監督ケヴィン・マッケンジーとスーザン・ジョーンズが新たに手を加えたヴァージョンである。

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プロローグはドン・キホーテとサンチョ・パンサが旅立つシーン。よく見られる騎士道精神に感化されて出発するという表現ではなく、一種の女性崇拝的なスピリットを感じさせるもので、その後の展開にも影響を与えている。そしてそれがこのバレエの物語の流れをスムーズにしている。
加治屋は第1幕の冒頭の登場シーンから活き活きと踊った。女性らしい華やかさと愛らしさを振りまいて、シムキンとも良いパートナーシップを組んでいた。第2幕のロマの野営地に迷い込んだシーでも、シムキンとロマンティックなパ・ド・ドゥを披露した。シムキンも得意のジャンプと軸の微動だにしないピルエットで応え、客席は大いに沸いた。
この『ドン・キホーテ』の映像を観てあらためて感じたことだが、全体にコール・ド・バレエに至るまで出演者全員の元気が溢れている舞台だ。ところがこちらそう言った目で見るためだろうか、どうしてもミュージカル風の印象を受ける。いささか荒唐無稽な物語でさえも、じつに上手くその世界に惹き込んでいく実力をカンパニーの伝統が持っているのだ。それ自体、クラシック・バレエを観客に楽しく感じさせるひとつの道なのだが、少しだけ物足りなさも残った。その点がヨーロッパのバレエ団とは、やはり異なっているのであろう。

ABTは来年2月に来日する。加治屋百合子は『くるみ割り人形』でアレクサンドル・ハムーディとパートナーを組んで踊り、オールスター・ガラではエルマン・コルネホと『海賊』のパ・ド・ドゥを踊る予定。シムキンはサラ・レインと『くるみ割り人形』を踊り、オールスター・ガラではイザベラ・ボイルストンと『テーマとヴァリエーション』、ラトマンスキー振付の日本初演作品ショスタコーヴィチの『ピアノ・コンチェルト 第1番』を踊ることになっている。

アメリカン・バレエ・シアター「ドン・キホーテ」(全3幕)

発売元/日本コロムビア株式会社
価格/5,040円(税込)
収録:2011年7月 東京文化会館

【出演】
キトリ:加治屋百合子
バジル:ダニール・シムキン
ドン・キホーテ:ヴィクター・バービー
サンチョ・パンサ:フリオ・ブラガド=ヤング
ガマーシュ:アレクセイ・アグーディン
メルセデス、森の精の女王:ヴェロニカ・パールト
エスパーダ:コリー・スターンズ
花売り娘:サラ・レイン、イザベラ・ボイルストン
キューピッド:レナータ・パヴァム

原振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー
振付:ケヴィン・マッケンジー、スーザン・ジョーンズ
音楽:レオン・ミンクス
演奏:東京シティ・フィル