関口 紘一

マシュー・ボーンの大ヒット作品『白鳥の湖』が3D映像になって全国公開される

マシュー・ボーンの『白鳥の湖』が3D映画になって上映される。この作品は世界的に大ヒットして、日本でも何回も上演されたことは良く知られている。特に昨年9月には、ABTのプリンシパル、マルセル・ゴメスがザ・スワンとストレンジャーに扮して出色の存在感を見せたことは記憶に新しい。この3D映画のザ・スワンとストレンジャー役は、2010年にも舞台で踊ったリチャード・ウィンザー。王子はドミニク・ノース、女王はニナ・ゴールドマンというキャストだ。

1505cinema01.jpg © Bill Cooper.

マシュー・ボーンの演出・振付は、チャイコフスキーの名曲の新たな魅力----20世紀という時代を媒介として発見した魅力----をダンスに結晶させた作品という意味でもエポック・メーキングな作品と言えるだろう。
文明が如何に発達しようとも人間の中に厳然と存在する性という暗黒、獰猛な動物としての本能が、白鳥に象徴されて現れ、宮廷文化の中で荒れ狂う。それが誰もが知るチャイコフスキーの音楽の中で、ダンスという形になって迫ってくる。そして3D映像により舞台をも凌ぐかと思われる迫力で展開する。カメラが対象にクローズすることで、ダンサーの表現のディティールまで正確に捉え、そうした原始の本能が如実に現れる。登場する時からいつも白鳥のコール・ド・バレエは動物の獰猛さぬかりなくを表現しており、人間の文化が作った究極の形式とも言える宮廷文化の中で育った王子の無意識の世界に強くに働きかける。それはやがてストレンジャーのような人格を持って彼の前に現れる。王子はその粗暴なしかし魅力的な宮廷を無視した行動に強い憧憬を抱き惹かれる。しかしストレンジャーは母親を陵辱するかのような行動を見せ、さらには母親もそれに応じるかのようにもみえて、王子の混乱は極まり、ついには正気を失う。すると弱った王子に白鳥の軍団が襲いかかる・・・・といった展開となっている。
マシュー・ボーンの『白鳥の湖』は3D映像になったことにより、舞台では気がつかなかった主役ダンサーとコール・ド・バレエの距離とその演技的表現が良く見えてくる。その意味で3D効果が成功を収めていると言えるだろう。
前半のガールフレンドの行状や宮廷の人たちとのやりとりなどは、それほどでもなかったが、ストレンジャーが登場して以降の迫力は、並みのドラマティック映画を遥かに凌ぐ素晴らしいものだった。
3D『白鳥の湖』6月6日より全国順次公開される。また、やはり、マシュー・ボーンが『白鳥の湖』『くるみ割り人形』に続いて挑戦したチャイコフスキー三大バレエ曲の『眠れる森の美女』も、7月4日から全国順次公開される予定だ。

1505cinema02main.jpg © Bill Cooper.

詳細は、http://matthewbournecinema.com/ を参照。

©New Adventures/Leopard Films/More2Screen