荒部 好

『バレリーナ谷桃子物語』

小林 進 著
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『バレリーナ  谷桃子物語』は、タイトルからも分かるように、谷桃子の半生を事実にそってわかりやすい物語にまとめている。
筆者は、パフォーミングアーツの専門家だそうだが、数多くのインタビューを重ねて、バレリーナ谷桃子の人生の軌跡を丁寧にたどっている。
神戸に生まれ口数が少なく大人しい少女だった上田桃子(本名)が、2歳の時に母の胸に抱かれて観たアンナ・パヴロワの『瀕死の白鳥』の熱い想いに誘われるように、うれしいが不安な気持ちの中、初めてダンスを習いに行くところから、物語は始まっている。
そしてプロのダンサーを目指してダンスを習い始め、日劇ダンシングチームのソリストになって、終戦を向かえる。戦後は日本初の『白鳥の湖』全幕上演に関わり、プリマ・バレリーナへと成長していく。
さらに結婚、別れ、谷桃子バレエ団の旗揚げ、念願のパリ留学と谷桃子の人生のドラマは続く。

西欧で生まれ発展したバレエを、多くの日本人がアンナ・パヴロワの来日公演で初めて目にした。それ以後、自分たちの手でバレエを上演する努力のために起った諸々の出来事は、今から振り返ってみれば悲劇的であったり喜劇的であったり、様々な波紋を描いた。ひとりの少女が、そうした渦中に飛び込んで日本を代表するバレリーナに成長し、振付家、舞踊家として尊敬を集めるようになるまでには、何回となくその余波を浴びてくじけそうになった。
しかしその波を、一心不乱の心情で乗り越えてきた谷桃子の物語は、やはり胸に迫る感動がある。
谷桃子バレエ団が創立60周年を迎える公演を行っている今、読むのに相応しい一冊ではないだろうか。

小林 進 著
雄山社 版
2008年03月
発行 2,205円(2,100円+税)