荒部 好

『吉田都 終わりのない旅。』

吉田 都著
 英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル・ダンサー、吉田都のフォトエッセイが刊行された。
バレエダンサー、吉田都自身の舞台から日常的な世界まで、さまざまの映像と彼女のポエティックな言葉をちりばめた一冊である。

 写真は、ファッション写真家の秦淳司とロイヤル・バレエのプリンシパル・ダンサーから写真家に転向したヨハン・パーソン、バレエの写真を撮り続けている廣瀬由美子。バレエダンサーの画家、ロバート・ハインデルが吉田を描いた絵も挿入されている。

 彼女はローザンヌ・バレエ・コンクールでスカラシップを得て、17歳でロイヤル・バレエ・スクールに留学。
サドラーズウエルズ・ロイヤル・バレエ団(現バーミンガム・ロイヤル・バレエ)に入団して、1995年にプリンシパルとして英国ロイヤル・バレエに移籍。そしてそれから、もう既に10年の時間が流れた。

 今は英国ロイヤル・バレエのトップスターとして君臨しているが、当初は、日本と英国のバレエの教育の違いに驚き、強烈な自己主張する友人にプレッシャーを感じ、体型の異なった仲間たちとのレッスンにたじろぐなど、孤独な戦いを繰り広げてきた吉田都。
 しかし、その戦いはじつに静か。決して自分を見失うことなく、静かに努力し、静かに問題を克服してきたのではないか。この本を見つめていると、そんなふうな感慨を抱く。

 それはきっとバレエダンサー、吉田都の舞台を観て、一分の狂いもない正確な踊りの中に、日本人でなければ決して表すことのできない繊細な優雅さを体験しているからである。そんなふうに、自ずから納得してしまう本。


 

『吉田都 終わりのない旅。』
吉田 都著
阪急コミュニケーションズ
¥2,200 (本体価格¥2,000)