荒部 好

『Yoko Morishita』

写真/中嶌英雄
森下洋子の写真集『Yoko Morishita』が刊行された。森下は今年で舞踊歴55年を迎えたが、ここに収められている123葉(バックステージのスナップを除く)の写真は、80~90年代を中心に撮影された舞台写真である。
 精選されたなかなか格調高い写真で、構成も見事にバランスが調えられている。プリマ・バレリーナ、森下洋子の舞台の息づかいが聞こえてくる一冊である。

 森下がヌレエフと踊る写真とともに、フェルナンド・ブフォネスと『白鳥の湖』を踊る写真も収められていた。ブフォネスはABTなどで活躍した、たいへん美しいラインを描くダンスール・ノーブルだった。(彼は昨年、惜しまれつつ亡くなってしまった。)
 ブフォネスが森下と初めて出会ったのは、ともに金賞を受賞した1974年のヴァルナ国際バレエ・コンクールである。そして84年に開催されたメトロポリタン歌劇場100周年記念ガラ・コンサートで、二人は『海賊』のパ・ド・ドゥを踊った。

 このガラ・コンサートには、シーモア、ダニロワ、ハイデ、クラガン、シブレー、アロンソなどに加えて、フォンテーンとアシュトンが『眠れる森の美女』を、パトリック・デュポンが名女優リリアン・ギッシュをパートナーに『ばらの精』を踊るという豪華絢爛のスターの祭典だった。森下は、公演中の上海から駆けつけるというハードスケジュールで踊ったが、ニューヨークの高名な批評家、アンナ・キセルゴフは「完璧だった」と賞賛している。
 ここに収録されているブフォネスと森下の写真は、87年となっているので、おそらく、オーストラリア・バレエ団の来日公演に二人でゲスト出演した時の舞台であろう。

 そしてこの瀟洒な写真集は、チュチュを着けた可愛らしい少女・森下洋子が「週刊少女フレンド」の表紙を飾っている写真を、最終ページに載せて幕を降ろしている。



『Yoko Morishita』
写真/中嶌英雄
主婦と生活社
¥3,000 (本体価格¥2,857)