荒部 好

『舞姫 テレプシコーラ』

山岸凉子
  山岸凉子の傑作『アラベスク』に影響を受けて、バレエ・ファンになってしまったりあるいは頻々と公演会場に出没するようになった人は多い。バレエ漫画は『アラベスク』に尽きる、とまでいう人がいるくらい、あの作品の魅力には堪え難いものがあった。むろん、他にも優れたバレエ漫画は描かれてきたのだが、やはり『アラベスク』の人気はカリスマ的だったのではないだろうか。

そして、山岸凉子の新たなバレエ漫画の連載がついに始まった。
当欄では、連載が完結してから取り上げようと固く決意していたのだが、読み進むうちにとうとう耐えられなくなってしまった。思った通り格段のおもしろさなので、連載中だけどコミックスは3巻まですでに刊行されているしご紹介させていただきます。お楽しみはこれからだ、というわけで。

いったい、バレエというものがどれだけ過酷な芸術であるのか、しかしまたバレエにはどれほどの魅力あるいは魔力があるのか、そしてバレエで成功するとどんなに甘い香りがするのかあるいはどんな至福をもたらしてくれるのか----。

山岸凉子の『舞姫 テレプシコーラ』には、それらのドラマのすべてが描かれようとしている。しかも、ごくありきたりな一人の女の子の日常生活の中に息づいいる感覚を通して、そうしたドラマは語られているのである。

母親でありバレエ研究所の主宰者の先生の生き方、姉でありバレエの先輩の理想的進歩、同級生でありバレリーナ志望の友人の癒しがたい渇望、その友人のあまりに厳しい生活を垣間見ること、バレエ芸術の魔力に魅入られてしまった人々の絶望、180度開脚に苦しむ少女へのバレエの先生の貴重なアドヴァイスなどなど………。この作品では、さまざまな人生が紡ぎ出す糸が絡み合って、ひとつの 大きな運命がうねりだしていくようにも見える。

物語は最初の大きな山場の、篠原千花、六花姉妹が出場するバレエ・コンクールへ。妹の六花の緊張は極度に昂まるが、その中でいままで見えていなかったものが、しだいにうっすらと見え始める。そして、思いがけない出来事がつぎつぎと展開していく………。
まだ『舞姫 テレプシコーラ』をひもといていない方がもしいたら、同じ人生で大きな楽しみをひとつ逃がしてしまいますよ。


 

山岸凉子さんのバレエコミック
「アラベスク」
キエフを舞台にした本格的長編バレエ漫画。
あの懐かしの名作が文庫サイズで発売されています。
白泉社 全4巻

まだまだこんなにある!バレエ・ダンスコミックス
「昴」
/曽田正人
/小館
現在も連載中

バレエ
「Do Da Dancin!」
/槇村さとる
/集英社
現在連載中

バレエ
「SWAN」
/有吉京子
/秋田書店

バレエ
「ニジンスキー寓話」
/有吉京子
/秋田書店

バレエ
「ボレロ」
/槇村さとる
/集英社

フィギュアスケート
「アダージオ」
/小野弥夢
/講談社漫画文庫

バレエ
「愛のアランフェス」
/槇村さとる
/集英社文庫

フィギュアスケート
「白のファルーカ」
/槇村さとる
/集英社文庫

フィギュアスケート
「N.Y.バード」
/槇村さとる
/集英社文庫

ダンス&バレエ
「ヴァルナコレクション」
/有吉京子
/秋田書店

バレエ
「舞子の詩」
/上原きも子
/講談社漫画文庫

バレエ
「ダンシング
ゼネレーション」
/槇村さとる
/集英社文庫

ダンス&バレエ