荒部 好

『ピンクのバレエシューズ』

作・ロルナ・ヒル 文・長谷川たかこ
 主人公の少女、イレーヌは14歳。パリ生れ。オペラ座のプリマ・バレリーナになるという夢を持って、ヴィオレット先生の教室でクラシック・バレエを一生懸命習っている。先生もとても目をかけてくれている。けれど、11歳の時に母が病気で亡くなり、3日前には父がインドシナで戦死してしまった。

 そして今イレーヌは、トゥールーズの先のル・ジェーヌのロンジャおじさんの家に行くため、急行列車に乗っている。お金持ちだというおじさんのところで一緒に暮らすことになる従姉妹たちと、うまくやっていけるのだろうか。パリを離れて良い先生のバレエ・クラスを受けることができるのだろうか。列車の中でそんなことを考えてとても不安な気持に陥っている時、手の美しい、将来は音楽家になりたいという少年と出会う‥‥。
 イレーヌは、フランスの絵画のように美しい自然に抱かれ、ロンジャおじさんの家族たちと交流しながら、努力を重ねてバレエの夢を育む。そして戦争孤児の奨学金を得て、ついに憧れのパリ・オペラ座バレエ学校へ編入を許される。

 後半の『バレリーナの小さな恋』では、オペラ座バレエ学校の現実が具体的に描かれる。

 作者のロルナ・ヒルは、若いバレリーナを主人公にした小説を何編か執筆している。それだけに、生徒同士の微妙な感情のからみあいや先生と教え子の交流、家族の反応、嫉妬や励ましなど若いバレリーナの周辺に起きる様々の出来事を巧みに描き、主人公の少女の揺れ動く気持を鮮やかに浮かび上がらせている。
 バレエに関心をもっている人なら、一気に読めてしまうだろう。






 

『ピンクのバレエシューズ』
『バレリーナの小さな恋』
作・ロルナ・ヒル
文・長谷川たかこ
ポプラ社¥630 (本体価格¥600)