荒部 好

『バレリーナ 谷桃子の軌跡』

バレリーナへの道65 文園社刊
 「バレリーナへの道・65」として刊行された『バレリーナ 谷桃子の軌跡』には、じつにたくさんの人たちが文を寄せている。
 この本は、まずは巻頭インタビューがあり、「谷桃子さんと私」「心に残る谷桃子」「戦後バレエ史を築いた谷桃子」「谷桃子と踊ったパートナー」「谷桃子の舞台で踊る」「谷桃子バレエ団で指導を受けた人たち」「芸談 谷桃子、ジゼルを語る」「谷桃子バレエ団上演作品」「受賞記録/谷桃子略歴」といった構成に編集されている。
 もちろん、それぞれに貴重な言葉が刻まれているが、やはり、パートナーとして踊った、関直人、小林功、横瀬三郎、高田止戈、加藤正雄、三谷恭三、小林恭などの人たちの証言は非常に貴重である。また、スタッフとしてかかわった人たち、橋本潔、田中好道、緒方規矩子、福田一雄、妹尾河童も想い出を寄せていて、バレエファンであっても、ふだんはあまり聞くチャンスのない人たちなので、たいへんに興味深い。そして、山野博大、伊地知優子などのまとまった文章から、谷桃子の輝かしい半生を、ある程度俯瞰してみることも可能だと思われる。
 ともあれ、どの人の交流談を読んでも、谷桃子のアーティストとして愛される人柄が、彷佛と浮かんでくる。
 偉大なバレリーナであるためには、接することのあるすべての人たちに愛される人間性を具えていなければならない、のではないだろうか。『バレリーナ 谷桃子の軌跡』を読んでいると、そのように思われてきたのである。



バレリーナへの道65
『バレリーナ 谷桃子の軌跡』
文園社
定価¥1,890 (本体価格¥1,800)