解説:文葉

『嘆きのパ・ド・ドゥ』

エレン・ボール著 木村博江 訳
 バランシンの『アポロ』で知られる、ギリシャ神話の詩、音楽、舞踊、哲学、天文などを司る9美神の世界を、1つのテーマにつき1作づつのミステリーを書いていくシリーズ。第1作目が、舞踊の女神テレプシコーラだったのでこの『嘆きのパ・ド・ドゥ』が書かれた。

 主人公は、ニューヨークに住む人気歴史ロマンの小説家、ジュリエット・ボーディン。親友の振付家ルース・レンズウィックが行き詰まってしまったディケンズの小説『大いなる遺産』のバレエ化に、頭を突っ込むことになる。美しい舞台を作る裏では嫉妬や野心が入り交じった激しい葛藤が渦を巻く。そしてリハーサルの最中、主役が倒れるというドラマティックな殺人事件が怒る。その謎を異常に臭覚が敏感なジュリエットが嗅ぎ分けていく‥‥‥。

 舞台はニューヨークのヤンシュ・バレエ団だが、新作を創っていくプロセスで、振付家、第1キャスト、第2キャスト、支配人、芸術監督、バレエ・ミストレス、コール・ド、プリンシパル・ダンサーなどなどの強烈な個性の持ち主たちが登場する。バレエ団の中の彼らの姿が、筋肉のひとつひとつの動きから発散する汗の臭いまで、見事に描写されている。

 著者のエレン・ボールは、「ニューヨーク・タイムズ」や「ヴィレッジ・ボイス」「ニューヨーカー」などに、主にアート関係の文章を寄稿している。



『嘆きのパ・ド・ドゥ』
エレン・ポール
木村博江 訳
ヴィレッジブックス
ソニー・マガジンズ
¥798 (本体価格¥760)