荒部 好

『小さんの娘 ハッピー出もどり』

小林喜美子/著
 長男はバレエダンサーの小林十市、次男は落語家の柳家花緑という<花の兄弟>を育てあげた母、小林喜美子の本が出版された。

 父は落語界の巨人で人間国宝の柳家小さん。娘はなに不自由無くお嬢さんとしてお稽古三昧の日々を過ごし、結婚してふたりの子供をもうけるが離婚。そのふたりの男の子を育てた母、喜美子の手記が『ハッピー出もどり』である。

 第1章は「男の子二人を育てるということ」で子育ての中で、それぞれの才能をみつけて伸ばしていった様子を書いている。第2章は「父・小さんとともに過ごした日々」として、娘時代から結婚、離婚、そして父・小さんとの二人暮らしと悲しい別れまで。第3章は「ハッピーに生きていく」。離ればなれに暮しているが、これからの二人の息子とともに生きていく心意気を述べる。最後には「息子たちからの返信」として、柳家花緑と小林十市の「おかあちゃまへ」と題した文章が付されている。

 この花緑と十市の文章がいい。泣かせるのだ。花緑は落語家らしく、母に優しくこころを込めて語り聞かせる文で読ませる。十市は海外生活を送りながら母に感謝した想いを、箇条書きにしている。

 曰く。
 僕にバレエを選んでくれてありがとう。僕が留学3年目、就職先を探しているときに「ベジャールバレエは?」の一言をくれてありがとう。クリスティーヌと付き合い始めたとき、彼女を認めてくれてありがとう。僕が日本に帰ってきている時、毎朝、朝食を作ってくれてありがとう。などなどを16項目にわたって記している。

 素晴らしい一家の楽しい物語である。

『ハッピー出もどり』
小林喜美子/著
ぴあ¥1,470
(本体価格¥1,400)