荒部 好

『運命に従う』

小川亜矢子 著
 小川亜矢子の振付けたダンスを観ると、なにか深い味わいを感じる。彼女はいつも、密度の濃いコクのあるダンスの舞台を創る。その背景にはやはり、波乱に富んだ情熱的な人生があったのである。

 小川は、東勇作に学んだ後小牧バレエに移り、そこが招聘したソニア・アロワの推薦により、ロイヤル・バレエ・スクールに留学する決心をするシーンが冒頭で語られる。1953年、1$は360円に決まっていた。小川亜矢子20歳の時だった。

 渡英後は、ロイヤル・バレエ・スクールでは、リン・シーモアとともに学び、アーノルド・ハスケル校長に可愛がられ、マーゴ・フォンテインに頼まれて彼女の兄のカメラマンのモデルになり、日本文学研究家のイヴァン・モリスと恋に堕ち結婚。パリにわたって、ベジャールやロ-ラン・プティ、ジジ・ジャメールなどもいたマダム・ローザンヌのスタジオに通い、『グラン・パ・クラシック』を振付けたことで知られるヴィクトル・クゾフスキーのカンパニーのルアーに参加。ここではイヴェット・ショヴィレ、ジャン・バビレ、クレア・ソンベールなどが踊っていたこともある。ニューヨークに移り、メトロポリタン・オペラ・バレエと契約して踊り、日本に戻ってスターダンサーズ・バレエ団の旗上げ公演にアントニー・チューダー招くなどなど、スタジオ一番街や青山ダンシング・スクエアで活躍するまでに、世界の舞踊史の前線とともに生きてきたのである。

 そして、63歳の時に24歳年下のダンサーと再婚し、71歳の今なお現役の振付家、ダンス講師として活躍している。
 もちろん標題の『運命に従う』は、こうした華麗な生き方を経験した上で感得することができた心境を表している。

『運命に従う』
小川亜矢子 著
幻冬舎
¥1,365 (本体価格¥1,300)