(荒部 好)

『KUMAKAWA 1999~2009 K-BALLET COMPANY』
 熊川哲也&Kバレエ10周年記念写真集

1008book.jpg

熊川哲也とK-BALLET COMPANYの1999年から2009年までの軌跡を追った大部の写真集が刊行された。言うまでもないが、1999年はK-BALLET COMPANYが創設された年であり、一昔とも言われる10年間を集成した写真集である。
巻末に掲載されているその10年間の詳細な記録を追っていくと、私のように観客席からあるいはジャーナリストとして、熊川哲也の活動を遠方から眺めてきた者にとってさえ、感慨を禁じ得ない。
K-BALLET COMPANY設立時のプレス・カンファレンスにおける熊川哲也のスピーチ、アルブレヒトに扮し最初の全幕バレエ『ジゼル』を踊りきった時の表情、ローラン・プティと舞台を創っていく姿、ヨランダ・ソナベンドの美術による『白鳥の湖』初演、フランツに扮した『コッペリア』のコミカルな演技、『ドン・キホーテ』の力強い舞台、『くるみ割り人形』の大胆な解釈、『ラプソディ』の超絶的テクニック、壮大な『海賊』、そして出演者から熊川哲也の名前が消えた、自身の復帰を飾った赤坂ACTシアタープレミアムオープニングの『ベートーヴェン第九』、再び『海賊』で熊川の名前が消える、2009年は『バレエ ピーター ラビットと仲間たち』で幕を開け、10周年記念全国ツアーの『ロミオとジュリエット』の世界初演に至る・・・そしてこのちょうど10年前、1989年に東京で開催されたローザンヌ国際バレエコンクールでゴールド・メダルと高円宮賞を受賞した時の英姿まで、様々な影像がつぎつぎと自然に浮かんできてしまう。

「まだ自分の仕事をふりかえるのは早い。この10年ではなくて、もっと時が過ぎてからでいいのではないか」と、この写真集の企画が持ち上がった際に熊川は言ったそうだ。
やはり、大きな理想を持ち大きな仕事を成し遂げていく人間の言葉は違う。自身の仕事の目標を設定している時間のスパンが大きい。私のような凡人が、漠然と不可能だと思っていたことを着実に仕上げてしまう、そのための時間の計測も正確なのである。
K-BALLET COMPANY設立の頃は、熊川はロイヤル・バレエ団を辞めなかったほうが良かったのではないか、といった囁きが時折、聞えてきた。しかし今、そんなことを発想する人さえいないだろう。ロイヤル・バレエのプリンシパル・ダンサーとしてコヴェント・ガーデンで踊りつづけるよりも、はるかに大きな仕事を成している、と万人が認めているからである。

『KUMAKAWA 1999~2009 K-BALLET COMPANY』熊川哲也&Kバレエ10周年記念写真集

写真/浅井慎平、岡村啓嗣、小川峻毅、木本忍、言美歩、十文字美信、瀬戸秀美、中田優、野沢敏昭、増田慶、矢野信夫、依田恭司郎、Bill COOPER、Johan PERSSON、(有)アートスタッフ
表紙写真/小川峻毅
監修/石飛由美子
編集/扇田慎平

TBSサービス 刊
定価:本体8,571円+税