(荒部 好)

『ショパン 奇蹟の一瞬』聴きながら読むジョルジュ・サンドとの愛

高樹のぶ子 著
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今年はショパンの生誕200年にあたることから、さまざまなイベントや出版物の刊行などが行われている。ダンス公演もショパンに関連した企画が、いろいろと試みられている。その中には、ショパンの生涯に大きな役割を果たしたといわれるフランス人女性の小説家、ジョルジュ・サンドとの恋愛を題材とした作品も多く見受けられた。

この『ショパン 奇蹟の一瞬』には、「聴きながら読むジョルジュ・サンドとの愛」というサブタイトル通り、ウラジーミル・アシュケナージとマルタ・アルゲリッチが演奏した15曲を収録したCDが着けられている。
そして芥川賞作家でラ・フォルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭のアンバサダーを務める女流作家、高樹のぶ子が、200年前に愛し合った2人の芸術家の辿った地----地中海のマヨルカ島、フランス中部のノアン村、さらにパリを訪ね、ショパンの名曲が生まれた瞬間に迫る書き下ろしの一冊である。
特に、1838年の冬、ショパン、ジョルジュ・サンド、サンドの子どもたちが逃避行したマヨルカ島。この風光明媚で温暖な地中海の島で死の幻影と闘いながら名曲が生まれる情景には、深い感銘を受けずにはいられない。細やかな文章とともに、おそらくは当時とほとんど変わっていないと思われる美しい写真が、極めて印象的である。
第1章 波が唄う夜 ノクターン第12番 ト長調 作品37-2 から第9章 諦念のフォルテシモ 舟歌 嬰ヘ長調 作品60まで、9章に分けられて楽想に沿って書き下ろされている。
女性らしい繊細な感性と恋の実感的な現実を背景に、紀行文と創作と写真とCDを組み合わせて、メディアとしても新しい展開を試みている。さらに室田尚子による解説として、「ショパンをめぐる人々」が付されていて、事実関係が明らかにされているので、併せて読むといっそう興味深い。

『ショパン 奇蹟の一瞬』聴きながら読むジョルジュ・サンドとの愛
高樹のぶ子 著
PHP 刊
本体1,300円税別