荒部 好

『宝塚バカ一代 おたくの花咲く頃』

荷宮和子/著
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著者は「おたく第1世代」だそうで、「おたくを理解することなく日本を理解することは、もはや不可能である」という考えに基づいて、広くおたく文化論を展開している。
この『宝塚バカ一代』も、小学生の時に体験した『ベルばら』ブームをきっかけにハマった宝塚はもちろん、少女漫画、アニメ、ゲーム、ファッション、ネット・・・と広範囲にわたっておたく文化を縦横無尽に論じている。
私のように、おたくをまだオタクと言ってその文化の黎明期あたりをうろついた経験のある者にとっては、おたくとはグラウンドは狭いが限りなく深い知識の持ち主、としか理解していなかった。だから、実際、この本を読んでその深さと同時に広さにも驚いている。それだけではなく、ズバリと問題に迫る方法の鋭さにも感心させられた。これは恐らく、オンオフの思考法がもたらしたものに違いない、と愚考している。

第1章「宝塚おたく」の日々の冒頭の「イワン・カラマーゾフに萌え!」から、宝塚スターのどういうところに萌えるのか、舞台表現のディティールを縷々語っていて、「なーるほど」と首肯させられことが多い。
そして「ヅカファン」にとどまらず、「HANAKO族」「オヤジギャル」「やおい」「JUN」「JUNE」「ボーイズ・ラブ」「メイド」など、社会風俗的な言葉を使った論鋒が展開されいく。
また、第3章の「宝塚×おたく」の現在では、「ボーイズ・ラヴ」の実作の一端を披瀝しつつ、「アニパロ」などの二次創作物の成り立ちを解説している。ここでも私は、かつて隆盛だった(今はどうか知らなくてすみません)同人誌の人気の秘密を初めて理解できた気持ちとなって、またもや「な、なるほど」と白旗を掲げざるを得なかった。(荒部 好)

青弓社刊 定価1,680円(本体価格1,600円)