浦野 芳子

『美しく、強く。バレリーナを生きる。 SHOKO』

中村祥子 著 平凡社

『美しく、強く。バレリーナを生きる。 SHOKO』の編集に携わることができた喜び

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チャコットのフリーペーパー、広告制作物などを通して、4年余りSHOKOとつきあってきた2010年、彼女が妊娠した。その少し前から、ダンサーの身体美に関心を寄せていた女性フォトグラファーとの実験的フォトセッションを数回、行っていたことから、SHOKOは「この機に妊娠した私の身体も記録に残しておきたい」と言った。――それが、こういう本を創ろう、創りたい、というきっかけになった。

まずはSWAN MAGAZINEに、出産前後のSHOKOのロングインタビューを掲載、そこから連載がスタート。年に4回の掲載とはいえ、舞台と子育てで忙しい合間を縫ってのメールでのやりとりは、楽ではなかったはずだ。しかし、SHOKOは一度も締め切りを破ることは無かった。「これからプロのダンサーを目指す人たちや、ダンスとは関係なくても悩んだり、行き詰まったりしている人たちに伝えたいことがある」そう言って、こちらの質問、リクエストに応えてくれた。その多くは手書きの原稿。SHOKOは「キーボードに向かうと何か気持ちが上手く出て行かない気がする。自分の手でペンを持つと、するりと身体から言葉が出て行く」と言った。

そんな、SHOKOの血肉からほとばしった言葉が、たくさん収められている一冊である。

ローザンヌ国際バレエ・コンクールでスカラーシップ賞とテレビ視聴者賞をダブル受賞したとき、すらりと手足の長い長身の彼女の未来は、さぞ輝かしいものと多くの人の目に映ったことだろう。しかし、彼女のプロのダンサーへの道は「身体がバレエ向きではない!」という、留学先の教師からの厳しい叱責からスタートする。怪我によりバレエ団から契約がもらえなくなったり、初めてのソロで大失敗をしたり、プロとしての自覚に欠けていると芸術監督から厳しい言葉を向けられたり、他人と自分を比較して自らを深く傷つけたり……。まさに苦難の道である。正直に綴られたSHOKOの想いに触れ、私は涙をにじませながら原稿に向かうこともたびたびあった。

言葉にしてしまえばとても当たり前のことなのであるが、「人生最大のライバルは、自分」である。自分と真っ向勝負して、弱さや狡さ、未熟さを受容したうえで新たな一歩を踏みだすことを、進歩、と言うのだと思う。しかし人は誰しもマイナスの自分なんて見たくもないし知りたくもない。そんな自分と関わらないですむのなら、蓋をしてしまいたい。私も含め、前に進めずにいる多くの人が、少なからずそんな風なのではないだろうか。
SHOKOの生きざまに触れ、私はたくさんの大切なことを教えてもらった気がしている。

本書は、出産という心身の大革命を経て生まれ変わった自身のエピソードから始まり、愛しい命との時間を積み重ねていく未来への希望の言葉で、結ばれている。最終章には、この本誕生のきっかけにもなった、未公開マタニティフォトも掲載。
バレエをはじめ、舞台というのは生身の人間あっての芸術だ。それぞれの人生を背負って立つ表現者たちが、非凡なオーラを発するから、私たち観客は感動を得、魅了される。
つまり、レッスンを含め、日常の時間の中で自分とどう向き合っていくかが、表現者としての輝きを左右するのではないか。

SWAN DANCE COLLECTION第一号にSHOKOを迎えられたこと、そして、一番最初の読者として彼女の原稿を目にすることのできた幸せに、感謝の気持ちでいっぱいである。

SHOKO 美しく、強く。バレリーナを生きる
中村祥子 著 平凡社
本体 : 1,900円+税