最初に、悲しいニュースがあります。

マシュー・ボーンの右腕の一人、スコット・アンブラーが亡くなりました。ほとんどの作品のオリジナル出演を果たし、またマシューの片腕としてエタと二人で作品を創っていました。最近は、イギリスのお芝居や、『オペラ座の怪人』のイギリス・全米ツアーの振付も担当し、大成功を収めていました。日本の皆様は、『ザ・カー・マン』『くるみ割り人形』『白鳥の湖』『シザーハンズ』で覚えていらっしゃると思います。『白鳥の湖』では、オリジナルの王子を踊っています。スワンは、アダム・クーパーでした。とても急なお知らせで本当に残念です。素晴らしい人を亡くしてしまいました。
スコットとは、舞台以外でも仲良くしてもらい、書くことはたくさんあるのですが、まだショックが強くもう少し落ち着いたら触れたいと思います。心よりお悔やみを申し上げます。

Photo:Mami Tomotani

さて、アメリカで二人の大統領を輩出し、41名のノーベル受賞者を出している有名な大学「プリンストン大学」でマシュー・ボーンのワークショップをニーナ・ゴールドマンとしました。(ウィキペディア参考)
2週間で5クラスありました!最初の2回は『眠れる森の美女』を教え、後の2回は『白鳥の湖』、最終回は、『白鳥の湖』の後にマシューとの質疑応答がスカイプでありました!
まずは、建物が凄いです! さすが私立大学。とっても美しいコンテンポラリーなビルの中にたくさんスタジオがあり、ロビーも落ち着けてとっても素敵です。周りの風景はヨーロッパを思わせます。
大学生のみなさんは、ダンスなどアートのクラスは必修らしいのですが、この生徒さんたちが実際にプロのパフォーマーになるのはほんの一握りで、みなさんアカデミック(それぞれ専攻している分野の勉強)な活動が主だそうです。

Photo:Mami Tomotani

それでも、この設備で講師陣もトップクラスが集まり、ダンス公演も世界で有名な振付家の作品を学び踊れるそうです。私たちを招いてくださった講師の方はマーク・モリス ダンス・カンパニーで活躍された方で、「ここの生徒たちは贅沢な経験をしています。」と仰っていました。今回は、ヨーロッパの振付家たちを学んでいる段階で、イギリスの代表、マシュー・ボーンの作品に決まりました。(それで私たちが招かれたのです)
最初、生徒たちはダンスを習う、というつもりでいたのに、想像のゲームをしたり、テクニックより物語を伝えることに重点を置くニュー・アドベンチャーズ独特のワークショップに戸惑いを感じていましたが、2日目、3日目となるとさすがプリンストン大学の生徒さんたち、要領をつかんできて、ただ踊るのではなく、演技があって踊るということにトライしていました。
言葉で書くと、「当たり前」と思うのですが、意外にこれが出来ていない生徒さんは多いです。すぐに鏡を見て、美しいラインをチェックしたり、ターンを頑張ったりはするのですが、「今、プリンスを見ながら踊った?」「今、どういう気持ちで踊ったの? 言葉にしてみて」というとなかなかそのことを考えて踊っている人たちは少ないです。また、どうしてもきちんと踊る方に意識がいきます。(特にバレエの生徒さんは鏡を見て綺麗に踊る人が多いです。:)
もちろん、創作もしてもらいました。まだ振付のやり方や自分で創る作業を指導していない、と講師の方は言っておりましたが、生徒たちは頑張っていました。ただ、マシューの作品を観たことがない生徒さんたちなので、演技では、ニュー・アドベンチャーズの『くるみ割り人形』とは違い、どちらかというとバレエの『くるみ割り人形』の感じのような演技で、これは、ニーナと今後の課題だね、どうやってもっと演技の中身、キャラクター作りを時間内に指導すればいいのかと話し合いました。

Photo:Mami Tomotani

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毎回、指導する中身を生徒たちの様子を見て変えて、『白鳥の湖』でも子供の白鳥、大人の白鳥、どういう性格かなども考えてもらいレパートリーを指導し、その後に創作もしてもらいました。
今後もアメリカでこのワークショップが広まるようにする、とイギリス側も言っていますが、本当にユニークな内容なので、世界でどんどん行われたらな、と思っています。

私は、その後は日本で開催されるブロードウェイミュージカルのプログラム、The Broadway Experience(TBE)のクラスのための振付けに入りました。

今度はシアター・ダンスです。シアター・ダンスの場合は、歌詞もあるのでまた違う感じになります。
私は4曲指導するので、かなり大変です。振りがすぐに出てくるときもあれば、たった1分に1週間かかるときもあります。ただ、私は振付が終わった後に(振り)を変えようと思うことは滅多にありません。振付が始まるまでに音楽を何回も聞いてイメージをします。まずは、そこでこうしたいという構成のイメージが出てきて、その後に振付に入りますが、メモをしないで自分で8小節ずつビデオを撮ります。どちらかというと即興で踊り、それを撮っていく感じです。
友人に「ミュージシャンが即興でジャムをする感じと似ているね、演奏してる方はどうやったか覚えていないよね。だから真実もそうやってビデオに撮るのはよくわかる。クリエティブな仕事だよね。」と言われ、なるほどと思いました。
ワークショップなど受けると違うやり方を見たり、教わるので好きです。
本当にクリエイティブな仕事はそれぞれみなさん違うので、面白いです。
料理や部屋の模様替えなども一緒ですよね。
みなさん、春になりどんな身近なクリエイティブなことをされていますか?

Photo:Mami Tomotani

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インタビュー & コラム

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友谷 真実 Mami Tomotani

マーサ・グラハム・サマースクール、劇団四季研究所、川副バレエスクールでダンスを学ぶ。
★主な出演作品:
ニュー・アドべンチュアーズ『くるみ割り人形』(クララ、キューピット役ほか)、『白鳥の湖』、『カーマン』、『エドワード・シザーハンズ』(ペグ 役ほか)、『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどの作品(オース トリア)、 アルティ・ブヨウ・フェスティバル(京都)、ベノルト・マンブレイの振付作;スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』; 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』など
★TV/映画:『くるみ割り人形』(BBC)他。
★振付作品:『just feel it?以・真・伝・心』個人のプロローグ(02年);アルティ・ブヨウ・フェスティバル(98年)、他。
http://ameblo.jp/mami-tomotani/

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