ダイアリー ~ダンサー日記~

友谷真実さん [ プロフィール ]

マーサ・グラハム・サマースクール、劇団四季研究所、川副バレエスクールでダンスを学ぶ。
★主な出演作品:
ニュー・アドべンチュアーズ『くるみ割り人形』(クララ、キューピット役ほか)、『白鳥の湖』、『カーマン』、『エドワード・シザーハンズ』(ペグ 役ほか)、『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどの作品(オース トリア)、 アルティ・ブヨウ・フェスティバル(京都)、ベノルト・マンブレイの振付作;スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』; 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』など
★TV/映画:『くるみ割り人形』(BBC)他。
★振付作品:『just feel it?以・真・伝・心』個人のプロローグ(02年);アルティ・ブヨウ・フェスティバル(98年)、他。

http://ameblo.jp/mami-tomotani/

From U.S.A 友谷真実

アクラム・カーンのデュエットを観ました。

ジュリエット・ビノシュ(フランスの女優 映画『ショコラ』、『イングリッシュペイシェント』主演)とイギリスのコンテンポラリー振付家兼ダンサーのアクラム・カーンのデュエットを観ました。とても素晴らしかったです。一人の女が男と出会って一緒に住みだし、愛し合い、すれ違いがあり一人が出て行き、それを追いかけ、最後は観た人の解釈によって違う終わりがある。というストーリーですが、台詞あり、マイムあり、ダンスあり、そしてちょっとした仕掛けがありと観る側を飽きさせませんでした。
 舞台セットもシンプルで、そこに照明が効果的に使われ絵画か映画を観ている感じでした。二人だけしか舞台に出てきませんが、ジュリエットはもちろん、アクラム・カーンも演技がとてもナチュラルで存在感がありさすがでした。ビックリしたのはジュリエットが最初から最後までコンテンポラリー・ダンスをみごとに踊ったことです。演技とダンスが自然に絡み合っていて、女優だからここまでしか踊れない。という限界は全然見えませんでした! 久しぶりにチケット代を払っただけの満足感を得たコンテンポラリー・ダンスの公演でした。

 レスタースクエアでミカとワインを飲んでいると、隣に座っている女性がロイヤル・バレエ学校の先生の一人、と分かりミカがロイヤル・バレエ学校出身だったのでオペラハウスで上演されているトリプル公演の割引チケットを頂きました。
 公演はとても良いのに、宣伝が遅れてあまり売れ行きが良くないそうです。私たちはとても楽しみました。最初は『ヴォランタリーズ』というグレン・テトリーの振付でモダン・バレエでした。総タイツでちょっと古いな、という感じを受けましたがダンサーたちは素晴らしく、アンサンブルの構成が面白かったです。
 1組のペアがちょっとつまずいたのですが、後ろのほうだったのでそんなに目立たなかったのに、しかもオーケストラの音がでていたにもかかわらず「Sorry!(ごめん)」という声がスット客席に届きました。私たちも声を出すな、と言われていますが、ロイヤル・バレエのダンサーたちも同じだ! と親近感を持ちました。(笑)はい、声は出さない方が良いですね。(笑)
 次の作品は、Flemming Flindt振付の『The Lesson』でピアニストの女性(Elizabeth McGorian)、教師の男性(Edward Watson)と生徒の女の子(Yuhui Choe)の3人しか出演しませんが、よくあるクラスを題材にした作品かな、と思ったら全然違いました。
 最初はピアニストの何か意味ありげなスタイライズされた動きから始まり、その後生徒の女の子が登場すると、可愛らしくなり、それに教師が登場すると、女の子との関係がおかしくコメディになりましたが、段々この教師の人格が変わって行くのと同時に内容に緊張感が出て来て、最後はサスペンス映画を観ている感じでした。この教師役のEdwardの演技は素晴らしかったです。ちょっと内気ないやらしいオタクのような演技から、だんだん性格が変わって生徒を脅して行く演技は観客をみごとに引き込んでいました。
 最後の内容はここでは書きませんが、事が終わってしまった後、ピアニストとのからみで元の内気なオタクの性格に戻るところでは「怖い」と、観客のみんなが思ったと思います。これは半端な演技だと嘘っぽくて、セットや映像なしで演技だけではなかなか観客を「怖い」と思わせるのは難しいのですが、彼は見事でした。初演の教師役はどのダンサーだったのかな、と気になりました。ピアニストのElizabethも、かわいらしい生徒役のYuhuiも素晴らしかったです。きちんと初演からこのスタイルをダンサーたちに指導したバレエミストレスのUrsula Hageliの仕事の素晴らしさもここに書いておきます。
 最後の作品は私の親友の一人マチリアスが所属していたカンパニー「Random(ランダム)」のディレクター、ウエイン(Wayne McGregor)の振付『Infra』でしたが、相変わらずスピード感があり、個々のダンサーたちにあった振付は観客をアート(芸術)の世界に引き込んでいました。12人のダンサーたちにとっても、とてもやりがいのある作品だと思います。普通では考えられない動きの組み合わせなのですが、それぞれのダンサーやペアの個性を引き出していて、また舞台の映像の使われ方が美しく、「Cool(かっこいい)な作品」に仕上がっていました。クラシック・バレエの観客にも飽きさせないリズムで、音楽もバイオリン、チェロとヴィオラの演奏に効果音が時々入り都会の喧騒がよく出ていて、これこそ21世紀のコンテンポラリー・ダンス、というトリにふさわしい作品でした。
 みなさんは年末にどの公演を観に行かれるのですか?

[2008.12.10]