ダイアリー ~ダンサー日記~

友谷真実さん [ プロフィール ]

マーサ・グラハム・サマースクール、劇団四季研究所、川副バレエスクールでダンスを学ぶ。
★主な出演作品:
ニュー・アドべンチュアーズ『くるみ割り人形』(クララ、キューピット役ほか)、『白鳥の湖』、『カーマン』、『エドワード・シザーハンズ』(ペグ 役ほか)、『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどの作品(オース トリア)、 アルティ・ブヨウ・フェスティバル(京都)、ベノルト・マンブレイの振付作;スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』; 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』など
★TV/映画:『くるみ割り人形』(BBC)他。
★振付作品:『just feel it?以・真・伝・心』個人のプロローグ(02年);アルティ・ブヨウ・フェスティバル(98年)、他。

http://ameblo.jp/mami-tomotani/

From U.S.A 友谷真実

ニューヨーク・シティ・バレエのバレリーナ、ウェンディ・ウェーランのドキュメンタリー映画を観ました。

なんて正直に生きてる素敵な女性なのでしょう。
私は彼女のステージを観たことがありませんが、本当にみんなから愛されたプリマバレリーナというのがドキュメンタリーから伝わってきます。

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ウェンディ・ウェーランは、1984年にカンパニーに入り、1991年にプリシンパルに昇格し、47歳で引退を決意します。ドキュメンタリーでは、46歳の時にヒップの手術をすることを決めるところから始まり、彼女は「46歳なのに、10代のようにまだ踊りたいと思ってしまうの」と泣きながら話すところは、見ていて痛い気持ちになり、でもその気持ちもわかるのでズンと胸に響きます。
それこそアメリカのトップで踊るということは、私たちでは想像できないような葛藤があると思います。
術後のリハビリで、フィジオ(理学療法家)の人にやっと動いて良いと言われたのに、センターでうまくターンが出来ず痛みもあったりしてフラストレーションが溜まるシーンがあります。フィジオの人から「動いて良いと言ったのは、バーを少しだけよ! センターまではやりすぎ、早すぎる。」と言われるシーン。すぐにでも踊りたい気持ちが痛いほど分かります。

彼女は他のダンサーとは違い、40代になっても体の痛みはなかったそうです。それが、ディレクターから初めて「今度の『くるみ割り人形』には違うダンサーを使う」と言われ、はじめて彼女は自分がその役には老いている、周りがそう見ている、と気づき、その次の日から体が痛くなりうまく踊れなくなり結果手術まで行ってしまいます。
凄いですね!「病は気から」と言われるように、ディレクターから言われなかったら、いつものように踊れていたかもしれないですし、反対に言うと、周りから愛されていた分、「まだ踊っているの? 引退しないの?」など若い世代からのプレッシャーもなくずっと踊れるという環境でもあったのかもしれません。
劇場のスタッフさんが、「初めて彼女から僕たちスタッフに挨拶や話しかけてくれたよ。今までは、誰も声をかけなかったのに」と言っていました。
シアターの世界で、一番怖いのは「スタッフに嫌われること」と言います。彼らが嫌うと基本の仕事はしますが、あなたのヘルプはしません。これは怖いと思います。特に外国では・・・彼らが嫌うといじめに入りますからね。

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私は劇団四季の時代からスタッフさんには感謝すること、また営業さんたちとも一緒にポスターを貼りに行ったりと動員を手伝う機会があり、それぞれの仕事があって舞台が成り立つのを学びました。(とうとう私はアメリカのスタッフさんと結婚したのですが(笑))
夫は、いじめはしませんが、わがままな役者がしたことは全部トップに報告しています。役者が、スタッフの目の前でゴミを床に捨てても拾わないそうです。そういう時は、はっきりとその役者に「それは僕の仕事ではないから」と言うそうです。日本では考えられませんが、ゴミをゴミ箱に捨てない役者さん多いです。小道具の台に捨てたりなど・・・・。
日本では鼻をかんでそのティッシュを床に捨てる人はいませんが、外国ではいますし、チューインガムを口から出してセットに捨てる人もいます(驚!)衣装さんたちはもっと凄いですよ。ディーバになります。でも、理由があるのです。私はそんな衣装さんとわがままな役者との対戦を密かに笑っていますが。
もちろん、人間誰にでも好かれたいと思います。でも、私もたまにはビシッと後輩に言います。嫌われるかもしれませんが、言うことが責任だと思います。例えば袖で新しい役を見るときは黒かダークな色の稽古着で見ること(お客様に見られないように、また出演者の集中力を妨げないように。)、病気や怪我で休んだ時は、飲みに行かないこと(外国ではよくあるのです。)劇場を出るときはできるだけ楽屋のゴミを捨てて綺麗にして出ることなど。(外国では、ほとんどの男性陣がそのままで出ます)
もちろん私も怒られたことはたくさんあります。キャッツでうがいをしていて、吐き出す時に屈まないので、水が隣の先輩にかかり、「うがいする時は屈みなさい。」と10代の時に言われたり、先輩がゴミ箱を掃除していて、同じ年頃のキャストの仲間と「ゴミ箱、掃除してくださってるのですね。ありがとうございます!」と言ったら先輩に「ありがとうございます、ではないでしょ。掃除します、でしょう。あなたたちが掃除しなさい。」と怒られたのを覚えています。私も若いときがありました(苦笑)
今思うと怒ってくれた先輩たちに感謝していますし、私も外国人の後輩たちにたまにビシッと言っています。文化が違うので時を選んでいますが・・・。
ただ、バランスもあるのであまりスイトックにならないように、させないようにも外国ではしています。

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話は戻って、ウェンディはとても良い方で復帰した時もスタッフさんたちから「お帰り!」と声をたくさんかけられていました。また、若いダンサーたちも彼女を見て学ぶのでとても良いことですよね。
そして、コンテンポラリーの新作で、振付中に「ヒップが痛いから振りを変えてくれないか」というシーン、よくわかります。本来なら振付家が言った通りに踊るのですが、やはり痛いのは仕方がありません。私は、上手にごまかす方法を見つけたり、パートナーに希望を伝えます。それは踊りを続けるために40代以上は仕方がないことだと思います。老いてくる体と一緒に楽しく週8回公演をやるためには。
日本でこのドキュメンタリーを観られる場合はぜひ見てください。彼女は本当に全部をカメラの前でさらけ出しています。
カンパニーに終わりを告げられるのかと思う不安、プレッシャー、ほとんどのバレリーナが見せない最後の決断。ずっと踊っていたい彼女ならではの映画です。『Restless Creature』オススメです。

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[2017.08.10]