9月はヨーロッパとウクライナのバレエ学校、バレエ団を訪れることができました。

キエフでは2度バレエの公演を見ることができました。キエフ国立バレエ団独特のユニークで新鮮なパフォーマンスでした。

9月12日

『Viennese waltz』
音楽:Johann Strauss (息子), Joseph Strauss, Johann Strauss (父)
音楽構成:O. Baklan
振付・構成:Aniko Rekhviashvili.

「キエフ国立バレエ団」Aniko Rekhviashvili芸術監督による作品。
かなり前に作られた作品ですが、シュトラウスの音楽に合わせて華やかにワルツを踊るシーンなど見応えたっぷりでした。
ストーリー展開もシンプルで解りやすい全2幕のバレエで、音楽はよく知られるヨハン・シュトラウスの3大ワルツなどが使用され、聞いても見ても楽しめる作品でした。

キエフ (C)Emi Hariyama

キエフ (C)Emi Hariyama

キエフ (C)Emi Hariyama

キエフ (C)Emi Hariyama

9月14日

『Chasing After Two Hares』
振付、演出:Yuri .Shevchenko
この作品は、先シーズンの最後に初演され、この日が2回目だったようです。
客席は満席で、見に来たお客様からは舞台途中で笑い声あり、拍手あり、最後も盛り上がり心から楽しんでいらした様子でした。
クラッシック・バレエの作品ではなく、ウクライナの民族ダンスの動きを取り入れ、ユーモアたっぷり。ストーリーはコメディで面白く演出され、一般のお客様でも楽しめるエンターテイメント性あふれる作品でした。
バレエをあまり知らない観光客でも楽しめる作品で、コスチュームも彩り鮮やか。クラシック・バレエの伝統を守るこのバレエ団がキャラクターダンスを主にした振付作品でも大成功収めていました。

その他キエフバレエ学校のレッスンを見学させていただきましたが、その指導法を見させていただき色々と再確認し大変勉強になりました。基礎の大切さ、そして教える上で大切なこと、もちろん踊る上で大切なことなど。常に勉強し新しい知識を取り入れ、そして大切な事は変わらず守っていく事の重要性。本当に貴重な時間でした。

キエフ (C)Emi Hariyama

キエフ (C)Emi Hariyama

ベルリン国立バレエ団の公演も見に行きました。
9月15日
『眠れる森の美女』
演出、振付:ナチョ・ドゥアト
キャスト
オーロラ:ポリーナ・セミオノワ
プリンスデジレ:マリアン・ワルター

この日は、ベルリン国立バレエ団の2017-2018シーズンのオープニングパフォーマンスでした。
そして、ポリーナ・セミオノワが主演と言うことで、私も期待をして足を運びました。
客席はまだシーズン初めだったせいか満席ではなく、かなり空席が目立つ感じでした。
ナチョ・ドゥアト版の『眠れる森の美女』は、レニングラード国立バレエ団と、ベルリン国立バレエ団の2つの異なるバレエ団で以前に見たことがあります。
セットや衣装のデザインは無駄なくシンプルで洗練されていましたが、豪華なつくりになっていました。振付は、プティパ版とはまったく異なりネオ・クラッシックがベースで、音楽のリズムと動きが的確に合い、見栄えある新鮮な動きが印象に残りました。
しかし、所々チャイコフスキーの壮大なクラッシック音楽には少し合わないような気もしました。
ポリーナ・セミオノワは、出産し母になってから初めて見ましたが、完全復帰していて安定感ある踊りを見せていました。
私がベルリン国立バレエ団で初めて見たときは、20代になったばかりだったポリーナ。まだソリストの役なども踊っていてフレッシュ感あふれていましたが、今は良い意味でオーラのある貫禄の踊りを見せていました。
マリアン・ワルターは今絶頂期で最高の舞台を見せてくれました。テクニックは以前から安定していますが、表現力も更に磨きがかかり正にアーティストに成長し、全てを備える素晴らしいダンサーです。
全体的にはシーズン出だしと言う事でバレエ団の最高の舞台とは言えませんでしたが、これから楽しみなダンサーが何人もいます。また、新しいバレエ団のカラーを確立して欲しいと思います。
ただ、今後コンテンポラリーのカンパニーになっていくかと思うと少し寂しい気がしました。

ベルリンに存在する3つのオペラ劇場、ベルリン国立歌劇場、ドイツオペラ、それに続き3つ目のオペラ劇場であるコミッシュオペラにてコンテンポラリーの2作品を見ました。

9月17日

『THE ART OF NOT LOOKING BACK』
振付、演出、音楽:Hofesh Shechter
6人の女性がほぼ最初から最後まで舞台上で踊り、感情表現あり、いろいろなシーンがありましたが、全体的には何をどう伝えたいのかが伝わってきませんでした。
このような作品は非常に難しいと思いますが、ダンサーたちの踊りはキレも良くエネルギッシュで素晴らしかったです。

『ERDE』
振付:ナチョ・ドゥアト
音楽:Pedro Alcalde, Sergio Caballero, Richie Hawtin, Alva Noto ,Mika Vainio
作品のタイトルERDEは日本語に訳すと「大地」、大地の生命感を表現した作品でした。
前半30分位は、白い紗幕の後で20人程の男性と女性ダンサーが踊る姿が見え隠れする状態で、ダンサーが紗幕から遠ざかる程雲の中に入って行くようなイメージを受けました。オブラートに包まれた様なステージでした。

ベルリン (C)Emi Hariyama

ベルリン (C)Emi Hariyama

時折紗幕の前にソリストを務めるダンサーが現れ、ソロやパ・ド・ドゥなどを披露し、美しい身体のラインで魅了しました。
後半、青いレーザーの光を使い、オペラ劇場全体が宇宙の中に入ってしまったような演出には驚きました。レーザーのシーンの後、舞台上の白の紗幕がダイナミックにゆっくりとステージ舞台上に落ちてきて、地球誕生と言うようなイメージのステージ上でダンサーたちが踊る姿は印象に残りました。
大地が誕生するまでのその過程を表現し、劇場の客席や舞台奥行きなど全てを使った「大地」、新鮮でアイデア満載、面白い作品に仕上がっていました。
ベルリン国立バレエ団を客観的に見ると、来年度、再来年度に代わる新しい芸術監督の影響などもあり、コンテンポラリーの方向に少し進んでいるような印象受けました。

ベルリン (C)Emi Hariyama

ベルリン (C)Emi Hariyama

来月も、劇場からレポート、そしていろいろな視野からレポートしたいと思います。よろしくお願いいたします。

11月12日、静岡県伊東市観光会館13時半開演にてパフォーマンスを開催いたします。 ラストになるかもしれない『白鳥』の抜粋を踊ります。
16年前に第1回を開催させていただき今回5回目、色々な想いがあります。また勉強しながら色々チャレンジして行きたいと思っています。
http://izufull.com/m/event_print.php?eid=Li7IpKFSBI

(C)Emi Hariyama

(C)Emi Hariyama

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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