アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase
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ロイヤル・バレエ ウィールドン新作世界初演とバレエ小品集

ヤノースキ
 ロイヤル・バレエは2月28日から3月19日まで、新旧4作品による「バレエ小品集」を上演。ウィールドンによる新作『エレクトリック・カウンターポイント』世界初演と、ロビンスの『牧神の午後』、バランシンの『ツィガーヌ』、アシュトンの『田園の出来事』という魅力的な作品群に、2キャストが挑戦した。

 3月5日のファースト・キャストと11日のセカンド・キャストによる公演を観る。
 ウィールドンの新作『エレクトリック・カウンターポイント』はバッハとスティーブ・ライヒによる音楽に、元バレエ団のプリンシパルとファースト・ソリストで、熊川哲也がKバレエを立ち上げた際のダンサーでもあり、現在は自分たちのカンパニー、ジョージ・パイパー・ダンスィズを主催するウィリアム・トレヴィットとマイケル・ナン(ダンサーとして、またバレエ・ドキュメンタリー製作者として、テレビ番組を通じてお茶の間の人気者である)の2人が背景のビデオ・アートを担当。

 ファースト・キャストにはゼナイダ・ヤノースキー、サラ・ラム、エリック・アンダーウッド、エドワード・ワトソンの4人が抜擢された。

ヤノースキー、アンダーウッド ヤノースキー、アンダーウッド ラム、ワトソン

 幕が開くと暗い舞台の上にダンサーが一人ずつ登場する。背景には同じダンサーの映像が映しだされ、彼らの独白が聞こえてくる。
「私は鏡と不思議な関係を持っているの。スタジオで鏡は私の友だち。私たちは強い信頼関係に結ばれているのに、一度舞台に立つと、もうそこに鏡はなくなって私は一人」
 着飾り、メイクをし、登場人物になりきる古典バレエの中ではうかがい知ることの出来ないダンサーたちの赤裸々な素顔が見え隠れする冒頭。
 そして、ビデオ映像とともに近未来のサイボーグのような衣装で4人が踊る作品中盤、華美な衣装に着替えた4人が観客の前に姿を現すエンディング。

 カーテン・コールでは「何と美しく斬新な作品なの!」と叫ぶ観客から、首を振る者まで観客の意見が大きく分かれた。
 ダンサーのモノローグや映像を用いたダンス作品は、近年多く見受けられるが、再演を繰り返す成功作というのは類を見ない。
 ウィールドンとトレヴィット、ナンによるコラボレーションは、視覚的に優れた作品を創り上げ、非常に印象的であった。だが繰り返し観るとなると、観客は毎回同じダンサーの「独白」に疲れ、視覚的にも最初の衝撃は薄れ色褪せて感じることであろう。

『エレクトリック・カウンターポイント』 『エレクトリック・カウンターポイント』
『エレクトリック・カウンターポイント』 『エレクトリック・カウンターポイント』 『エレクトリック・カウンターポイント』

 セカンド・キャストを踊ったのはラウラ・モレーラ、ディエドル・チャップマン、リッカルド・セルヴェーラ、マーティン・ハーヴェイの4人。
 作品を無機質に踊ったファースト・キャストに対して、セカンド・キャストはより人間的で、役に熱い血を通わせ各々の個性を際立たせようとしたのが興味深かった。

『エレクトリック・カウンターポイント』 『エレクトリック・カウンターポイント』

『牧神の午後』はファースト・キャストをカルロス・アコスタとサラ・ラム、セカンド・キャストをイヴァン・プートロフとアレクサンドラ・アンサネッリが踊った。
 ダンス・スタジオで午睡から醒める男性舞踊手、そこに現れた美しいバレリーナは現実であったのか、まどろみのさなかに見た美しい夢だったのか?

 包容力のある男性的なアコスタとクールな金髪美女ラム、繊細なプートロフと可憐で表現力に富むアンサネッリという対照的な取り合わせ。
 レッスン場の鏡の中にお互いを見出す「出会い」、2人が共に踊る場面でリフトされ、男性の肉体に宿る秘められた力に驚き、おののく様子を演じたアンサネッリが素晴らしい。NYCBからロイヤルに移籍後、最近では非常な演技力を身につけ、現在バレエ団で最も注目されるバレリーナに成長を遂げている。

アコスタ、ラム アコスタ、ラム
アコスタ、ラム アコスタ、ラム アコスタ、ラム
アコスタ、ラム サラ・ラム カルロス・アコスタ
プートロフ、マルケス プートロフ、マルケス イヴァン・プートロフ
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