アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase
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注目を集めるクリストファー・ウィールドン率いる「モルフォーセス」
『アフター・ザ・レイン』
さらに9月18日〜23日までは、新進振付家クリストファー・ウィールドンが率いるカンパニー「モルフォーセス」が、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で旗揚げ公演を行った。
ウィールドンは英国ロイヤル・バレエ出身で、ローザンヌ国際バレエ・コンクールでは傑出したダンサーにだけ贈られる金メダルを受賞している。アラインメントの美しさに秀でた非常に芸術性の高い踊り手であったが、ファニー・フェイスが災いし、ロイヤル・バレエ団では、アシュトンやマクミランの物語バレエの主役には無理があったからか、20歳で渡米し、ニュー・ヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)に入団した。音楽性とラインの美しさでダンサーとして頭角を現し、振付家としてもデビューして26歳でNYCBの常任振付家となった。34歳になった現在では、英国ロイヤル、ボストン、サンフランシスコ、ボリショイなどの著名なバレエ団にも作品を提供し、今や世界で最も忙しい振付家の一人といわれている。
カンパニー名の「モルフォーセス」は、ウィールドンがジョルジュ・リゲッティの弦楽4重奏曲第1番「メタモルフォーセス・ノクチューン」に振付けた小品と同名である。
現在このグループは、公演ごとにウィールドンがこれまでの活動で得た友人やお気に入りダンサーをNYCBやアメリカン・バレエ・シアター(ABT)、英国ロイヤル・バレエ団他から借りて公演を行っている。
公演はA/Bの2プロダクションが組まれ、それぞれでウィールドンの新作世界初演が行われた。
『モルフォーセス』で幕を開けたAプロではウィールドン作品3つに加え、フォーサイスの『スリンガーランド・パ・ド・ドゥ』と、今回ダンサーとしても参加したエドワード・リャン振付『ヴィシシテュード』の小品5作が披露された。
話題のウィールドンの世界初演作『プロコフィエフ・パ・ド・ドゥ』を踊ったのは、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、アリーナ・コジョカルとヨハン・コボー。美しい構成でありながら、強い身体能力と厳しいパートナーシップが必要とされる小品に挑んだ2人は、短いリハーサル期間にもかかわらず、持ち前の身体能力の高さと音楽性、現在、世界最高クラスと思われるパートナーシップを見せ、気鋭の振付家の期待に大いに応えてみせた。
BプロにはABTのアンヘル・コレーラと英国ロイヤル・バレエ団のアレクサンドラ・アンサネッリが客演し、バランシン振付の『アレグロ・ブリランテ』を踊ったほか、ウィールドンの小品『フールズ・パラダイス』の世界初演が行われた。
初期のウィールドン作品には、バランシンやロビンスの影響がうかがわれ、本人のオリジナリティはやや希薄に感じられた。だが8月のボリショイ・バレエ団ロンドン公演で英国初演された『エルシノア』、そして今回の世界初演の2作品と、A/B両プロの最後に踊られた『アフター・ザ・レイン』には、身体の一部をコンタクトすることでダンサー達が形作るフォーメーションの妙や、作品が醸し出す独特のリリシズムなど、ウィールドンのオリジナリティが光った。またこの新進振付家は、リゲッティ、アルヴォ・ペールトなど現代音楽に造詣が深く、作品に使用する音楽選曲にも素晴らしいセンスを備え、振付と共に関係者や観客の心を鷲掴みにした。
ダンサーでは前述のコジョカル、コボー、コレーラ、アンサネッリに加え『アフター・ザ・レイン』を踊ったウェンディ・ウィーランとクレイグ・ホール、『フールズ・パラダイス』他を踊ったゴンザロ・ガルシアが強い印象を残した。
『アフター・ザ・レイン』
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