守屋光嗣 text by Koji Moriya
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『マイヤーリンク』:エドワード・ワトソンへの期待
エドワード・ワトソン
4月から5月にかけて、ロイヤル・バレエはケネス・マクミラン振付の『マイヤーリンク(うたかたの恋)』を上演した。あら筋については、2004年4月号の、船引さんのレヴューをご覧ください。
http://www.chacott-jp.com/magazine/around/uk_16.html
3シーズンぶりの今回の公演で注目を集めたのは、イギリス人プリンシパル・ダンサー、エドワード・ワトソンの、ルドルフ役のデビュー。古典バレエでの主役へのキャスティングが少ない一方で、高度な演技力を要求される役や、モダン、コンテンポラリーでの活躍が著しいワトソン。今回、上演前に幾つかの新聞で彼への単独インタヴューが掲載されるなど、現段階で、イギリス人男性としては唯一のプリンシパルとしてここにきて注目度が高まっている印象を受けた。
ワトソン、ガレアッツィ
その期待に応えてか、ワトソンのロール・デビューは批評家から、そして観客から非常に高い評価を得た。また、ワトソンはファースト・キャストではなかったため、脇はファースト・ソロイストやソロイストのダンサーがキャストされたそうだが、彼の熱演に刺激されたのか、全体的に見ても、多くのプリンシパルが共演したカルロス・アコスタやヨハン・コボーの舞台よりも好意的な評価を得ていたのが、印象に残った。
ここまでワトソンの評価が高まっているにもかかわらず、既に発表されている来シーズンのピリオド1のプログラムの中で、ワトソンはマクミランの『ロミオとジュリエット』だけにしかキャスティングされていない。観客として、彼を古典バレエの王子役でも観てみたいのだが、なかなか実現しない。このいってみれば偏ったキャスティングを見ていると、ロイヤル・バレエのキャスティングはかなり固定観念、例えばダンサーの容貌などに縛られてしまっているのではないか、と思ってしまうことがよくある。
筆者が実際に観たのは、ヨハン・コボーとアリーナ・コジョカルのキャスト。この二人の他、ルドルフの母、エリザベート皇后を演じたイザベル・マックミーカンや、その愛人を演じたヴァレリー・フリストフが好演していた。反面、ルドルフの妃を演じたロベルタ・マルケスが全く役を演じるレヴェルに到達していなくて、誰が舞台の中央にいるかで物語の連続性が途切れてしまうような印象だった。『マイヤーリンク』の世界を舞台に最良の形で再現するには、ロイヤル・バレエといえどもキャスティングについては難しいことがあるのだろうと想像する。
ワトソン、ガレアッツィ
エドワード・ワトソン
『セイクレッド・モンスターズ』
シルヴィ・ギエム、アクラム・カーン
昨年の秋のサドラーズ・ウェルズ劇場での世界初演以来、精力的に各国で公演されている、シルヴィ・ギエムとアクラム・カーンのコラボレイション、『セイクレッド・モンスターズ』。今回も、ほぼ完売の人気ぶりだった。
サドラーズ・ウェルズ劇場で2度目となる今回、構成の根幹は変わっていなかったが、いくつか振付に変更があった。特に顕著だったのが、始まりと終わり。幕が上がると同時にチェロの演奏が始まり、舞台には既にギエムとカーンがいて、互いに前になり後ろになるように一緒に踊っている。カーンが振付けた二人のデュオ・パートの最後では、古典バレエ・ダンサーとしてのギエムをもっと魅せる振付が加えられていた。
初演時に感じた、75分の上演時間の中で3人の振付家によるダンス・パートの構成には今回も散漫な印象を抱いた。反面、加えられた変更によって、このコラボレイションが、演じられるたびに変化し続けていることを強く感じた。前へ、前へと進みつづけていく意思が、舞台に漲っていたようだ。
今回の再演の初日を終えて、BBCのラジオ4のインタヴューで、ギエムはこう語っていた:「私は、古典バレエを踊らない、ロイヤル・バレエで二度と踊らない、といったことはない。ただ、今は、コンテンポラリーが自分の中で大きな位置を占めている」。
日本びいきのギエムにしては珍しく、『セイクレッド・モンスターズ』は未だに日本では商業的に公演されていないようだが、日本で上演されるとき、どのような変化が加えられているのか。
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