守屋光嗣 text by Koji Moriya
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ニネット・ド・ヴァロワ演出の『コッペリア』
ロイヤル・バレエのシーズン開幕2番目の演目は、カンパニー創設者のニネット・ド・ヴァロワ演出の『コッペリア』。この演出がはじめて上演されたのは、1954年と半世紀も前だが、2001年上演時にセットなどに手が加えられたためか、古臭さなど全く感じられない、とても活き活きとした演出だ。
ある小さな町に住むコッペリウスは、人形を作っている。彼は、まるで人間そのものに見える「コッペリア」をバルコニーにおいた。コッペリアを見たスワニルダは、挨拶をし、手を振るが、無視されたと思い面白くない。更に、彼女のフィアンセのフランツが、コッペリアに気がある素振りを見せているのも気に触る。
『コッペリア』第1幕より
町に新しい鐘が来るのを祝ってお祭りが催されることに。そこで、婚約しているカップルにお祝いが渡されることになった。フランツの真意を確かめたいスワニルダだが、想いがすれ違ってしまうようで、悲しそう。フランツは、スワニルダへの想いを彼女に伝える。
コッペリウスは、町の人々の勘違いに大満足。夕方、家を出て酒場に行く途中、若者たちにからかわれて動転したコッペリウスは、家の扉の鍵を落としてしまう。その鍵を見つけたスワニルダと友人たちは、好奇心に負けて、コッペリウスの家に忍び込む。鍵がないことに気付いたコッペリウスが家に戻ると、扉が開いている。急いで家の中に戻るコッペリウス。その後ろから、一目コッペリアに逢おうと、フランツがはしごを担いでやってくる(第1幕)。
『コッペリア』第2幕から
コッペリウスの家に忍び込んだスワニルダたちは、コッペリアが人形であることを知る。他の人形を動かしている所にコッペリウスが戻り、彼は少女たちを追い払う。スワニルダだけは、コッペリアを入れてあった小部屋に隠れる。 そこにフランツが忍び込んでくる。一度は彼を力づくで倒そうとしたコッペリウスだが、計画を変更して妙なくすりを騙して飲ませる。気を失うフランツ。魔術書を引っ張り出してきたコッペリウスは、フランツの魂をコッペリアに移そうとする。コッペリアに成りすましたスワニルダは、さもコッペリアが生きているかのように踊りだす一方で、何とかフランツを気付かせようと必死だ。
そこにスワニルダの友人たちが、彼女を救いだすために戻ってくる。騙されていたことに呆然とするコッペリウス。漸く気付いたフランツとともに部屋から出て行くスワニルダ(第2幕)。
あくる日の夕方、新しい鐘がお披露目された。お祝いを受け取る婚約者たち。その中にはスワニルダとフランツの姿も。コッペリウスは、スワニルダたちが彼の人形を壊したことを訴えるが、彼にも祝いの金が渡されてご満悦。農民達の祝いの踊りが披露される中、スワニルダとフランツの結婚が華やかに祝福される(第3幕)。
ルーク・ヘイドン
吉田都とルーク・ヘイドン
吉田都
筆者が見たのは、スワニルダに吉田都、フランツはフェデリコ・ボネッリ、コッペリウスがプリンシパル・キャラクター・アーティストのアラステア・マリオットの舞台。
シーズン開幕直前でのK バレエ カンパニーへの移籍で、日英間の移動などコンディション調整など大変なことも有ると思っていた。が、吉田が演じるスワニルダは、まさにすべての観客が、共演者が思い描いた通り、いやそれ以上のスワニルダだった。
美しいながらも、かなり複雑なドリーブの曲にのって、華麗なポワント・ワーク、全くぶれのない動き、控えめながらも自分が何を期待されどんな役を踊っているかを理解している自信が見て取れる吉田の踊りは、まさに「ロイヤル・バレエ」のプリマ・バレリーナ。第一幕、ロイヤル・バレエ・スクールの生徒たちが、吉田のヴァリエイションを一瞬たりとも見逃さないぞ、といわんばかりに見つめていたのが印象的だった。多くのロイヤル・バレエ・ファンが思っていることだろうが、吉田の経験、技術、そして作品への理解を次の世代に是非教え継いで欲しい。
演技面でも、吉田が見せたスワニルダの性格描写はとても判り易く、且つ繊細だった。第1幕では、おきゃんでちょっと勝気。でもフィアンセのことを思うとそわそわしてしまうどこにでもいそうな少女を。第2幕では、人形とスワニルダ本人の動きの明確な踊り分け。演技ではないが、コッペリアが踊るスパニッシュダンスのシーンを観ていたら、是が非でも吉田のキトリをもう一度見てみたくなってしまった。
そして第3幕。純白のチュチュに金糸の刺繍があしらわれた結婚衣裳で舞台に立つ吉田は、それまでのどちらかというと純朴な少女から、正真正銘、その夜のプリンセスになっていた。フランツとのグラン・バ・ド・ドゥでは、次第に吉田の集中力が高まっていたようだ。
『コッペリア』第3幕から
フランツを踊ったボネッリは、『くるみ割り人形』などで既に吉田と組んでいるので、パートナーリングは非常に安定していた。加えて、ボネッリ本人の成長ぶりがめざましかった。フランツ役は男性ダンサーの見せ場がやや少なめだが、本人のヴァリエイションで見せた洗練された動き、パートナーへの気遣いなど、ロイヤル・バレエに移籍した当時と比べようもないくらいだ。当らずとも遠からずというところで、ジョナサン・コープ引退後、空席のままのカンパニーを代表するダンスール・ノーブル、と認められるのも近いのではないだろうか。
マリオットは、人形への捻じ曲がった愛情をパワフルに放出していた。が、筆者にはちょっとなまぐさかった。
コール・ドのダンサーたちも、開幕に続いて絶好調。第1幕の農民たちによる群舞の溌剌とした動きは、それだけでもカンパニーの好調ぶりがうかがえた。中でも、スワニルダの友人役のナターシャ・オウトレッドとクリスティーナ・エリダ・サレルノの演技の細やかさ、第3幕でオーロラを踊ったラウラ・モレーラの優美な動きが特に印象に残った。
※注:写真は今回の公演のものではありません
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