今回のグループ公演の出演者は、正式なタイトル「Carlos Acosta with Guest Artists from The Royal Ballet」が示すように、すべてロイヤル・バレエから。アコスタ、セナイダ・ヤナウスキー、マリアネラ・ヌニェス、マーラ・ガレアッツィ。来シーズンからプリンシパル昇進が発表されたサラ・ラムとティアゴ・ソアレス。そしてホセ・マーティン、ルパート・ペネファザー、カロリーヌ・ドゥプロとサマンサ・レイン。当初出演が予定されていた崔由姫が、怪我で降板してしまったのは残念だったが、6人のプリンシパルが出演する、豪華なキャストだった。加えて、現在のロイヤル・バレエのトップに占めるヒスパニック・ラテン系のダンサーが多いことに改めて気付いた。ここに、タマラ・ロホ、ロベルタ・マルケス、ラウラ・モレーラ、リカルド・セルヴェラが参加していたら。音楽は、一部を除き、ロイヤル・バレエ・シンフォニアによる。
第2部は、新しい演目を、という意欲は買うのだが、振付とダンサーのミスマッチが気になった。例えば、後半最初の演目、『End of Time』(ベン・スティーヴンソン振付)でのマーティン。彼の魅力である快活さを全く発揮できないスロー・テンポのパ・ド・ドゥで、何故これを取り上げたのか首をかしげざるをえない。更に、このパ・ド・ドゥ自体が、『マノン』(マクミラン)の沼地のパ・ド・ドゥにかなり影響されたのではないかと思える振りがいくつか見受けられて、そちらのほうが気になってしまった。
ヌニェスとソアレスによる『ブエノスアイレス』(Gustavo Mollajoli振付)に続いて、ベルギー出身で、現在ドイツのヘッセン州立劇場のバレエ監督である、Ben Van Cauwenberghによる2作品。両作品とも、歌われるシャンソンのタイトルが使われている。舞台後方にパリのカフェのようなテーブルが並べられ、一組のカップルがワインを楽しんでいる中、一人の女性(サラ・ラム)が現れる。黒のシンプルなドレスをまとった彼女はエディット・ピアフの「Je ne regrette rien(私は後悔しない)」が流れる中、笑みを絶やすことなく、軽やかに踊りだす。彼女が踊り終わると、カップルに話し掛けていたちょっと酔った感じの男(アコスタ)が、煙草を持ったまま踊る(音楽はジャック・ブレルのLes Bourgeois)。
普段ロンドンでは余り観られないであろう類の振付で、面白かった。資料によると、『La vie en rose』という舞台の一部とのこと。機会があれば、全体の中でどのようなパートに振付けられているのか、是非見てみたい。
ロイヤル・バレエのコール・ドの一人、リアム・スカーレットによる『マーゴとルディ』(ガレアッツィとペネファザー)。スカーレットは振付に熱心なようだし、いくつかの賞も獲得しているそうだ。が、これは、タイトル自体がミスマッチ。この伝説的なダンサー二人のパートナーシップが、そんな緩やかな踊りで表現されるようなきれい事だけではなかったであろうに。
個人的に、パフォーミング・アートしてこのプログラムのピークと感じたのは、ヤナウスキーが踊った『Nisi Dominus』(ウィリアム・タケット振付)。抽象的な振付で、正直な所、なにを表現したいのかは理解していない。が、モンテヴェルディの厳かな音楽が流れる中、正視するのを躊躇ってしまうような奇抜な衣装に身を包んだヤナウスキーが、何かを伝えよう、何かを表現したいと必死に、同時に躍動感を失うことなく踊る姿から、彼女の表現者としての誇りを感じた。
最後は、Georges Garciaの『Majisimo』(音楽はマスネのオペラ、Le Cidから)で華やかに舞台は終わった。そして、舞台の熱狂の余韻が静まる中、始まりとは逆にダンサーは衣装を脱ぎ、それぞれが舞台裏から去り、最後にアコスタが舞台袖に歩み去っていった。