守屋光嗣 text by Koji Moriya
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『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
 プログラム発表当初はなかった演目。1月にニュー・ヨーク・シティ・バレエから移籍してきたアレクサンドラ・アンサネッリのお披露目もかねていたのだろうか。4日は、そのアンサネッリと、フェデリコ・ボネッリ。6日は、マリアネラ・ヌニェスとアコスタ。
 全く知らないダンサーなので当たり前なのかもしれないが、アンサネッリの踊りが、理想のバランシーン・スタイルであるとすれば、思い描いていたバランシーンのイメージを修正せざろう得ないかな、と感じるほど異質なものにみえた。彼女の踊りの印象を一言で表すなら、「シャープ」。フェッテ、ジャンプすべてがまるで空気を切り裂くよう。オーケストラが奏でるチャイコフスキーの音楽のテンポから外れることは一切無かった。が、残念ながら彼女が旋律を聞いていたようには、見えなかった。移籍したばかりということもあるし、今後に期待。
 結果として初日の2月4日は、大西洋を挟んで、バレエの解釈が如何に違うかを強く感じた。



アンサネッリ

ボネッリ

アンサネッリとボネッリ

『火の鳥』
 フォーキンが1910年に振付けたもので、初演はパリ。音楽はストラヴィンスキー。ロイヤル・バレエのパフォーマンスは、DVDで発売されているので、ご存知の方も多いことだろう。初日はリアン・ベンジャミン、エドワード・ワトソン、アラステア・マリオット(火の鳥、皇帝、魔法使いの順)。6日は、吉田都とヴァレリィ・フリストフ、クリストファー・サウンダーズ。

 不死の魔法使いが統べる庭で火の鳥を捕まえた皇帝は、彼女を自由にする代わりに、羽根を得た。羽根は、助けが必要になったときにかざすと、火の鳥が現れ助けてくれるというもの。
 日が暮れ、皇帝はある城の門にたどり着いた。そこに美しい女性が現れた。皇帝と彼女はキスをかわすが、夜明けが近づき彼女は城に戻っていく。戻る直前、女性は城が不死の魔法使いのものであることを告げ、絶対に近づかないように伝える。


 しかし皇帝は門を開けてしまう。途端にベルが鳴り響き、城から異形のもの達が沢山現れ、最後に魔法使いが出てきた。魔法使いが皇帝を石に変えようとしたとき、皇帝は火の鳥の羽根を取り出しかざした。
 火の鳥は約束通り現れた。彼女は異形のもの達を踊らせ、やがて全員を疲れさせて眠らせてしまった。魔法使いも眠ってしまう。火の鳥に教わったとおり、魔法使いの魂が入った卵を盗み出した皇帝は、その卵を地面に叩きつける。魔法使いの呪文の効力は失せ、異形のもの達は、元の人間の姿に戻る。
 皇帝と妃は結婚し、多くの人がそれ祝う為に集まる。


ベンジャミンとワトソン


エンディング
中央はジェネシア・ロサートとワトソン
 タイトル・ロールの火の鳥以外は、「バレエ」というよりも民族舞踊のような振付といってもいいだろう。しかしながら、この演目から、ロイヤル・バレエの伝統の深さを両方を強く感じた。他の演目に熱狂していた観客は戸惑っていたようにも見えたが、こう言ったちょっと捉えどころのない、でも強烈な個性を放つ演目はエンタテイメントとしても充分に面白いものだ。

 ベンジャミンと吉田は、火の鳥を持ち役にしている。両者とも、想像上の生き物である火の鳥が発しているであろう、現実を超えた存在感を強烈に表現していた。
 ワトソンは、プリンシパルというランクが彼の演技力に磨きをかけているよう。4月のアルブレヒト・デビューに留まらず、古典バレエのノーブルな王子役を次々と踊って欲しいものだ。当夜の印象からは、ワトソンはもっと変化していくであろうと感じた。

 6日はさらにサプライズが。一通りカーテン・コールが終わったところで、ジョナサン・コープが二本の杖をつきながら、舞台に現れた。やつれていたように見えたが、声はしっかりしていた。
 「今晩、舞台に立てなかったのは、大切な機会を失ってしまったと同時に、自分のダンサーとしてのキャリアに幕を引く事ができなくてとても残念。でも、心は今夜この会場と舞台にあります。Thank you and God bless」、とのこと。
 体調が回復してから、再度彼の引退公演があるのかについては、今のところ情報はないが、あの夜無理を押して出てきたのは、コープ本人もけじめをつけたかったのではと思う。


アラステア・マリオット

ベンジャミン

ワトソン

 

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