●マーゴを彷佛させたという吉田都の『オンディーヌ』
今シーズンはアシュトン・イヤーを記念してアシュトンのマスターピースの上演が続き、『オンディーヌ』はレパートリーの中で最後の全幕作品として、4月19日〜5月24日まで上演されました。
アシュトンが1958年にハンス・ワーナー・ヘンツェの音楽に振付けた『オンディーヌ』は、水の妖精オンディーヌが人間の騎士パレモンとの恋に落ちてしまった結果起きる恋愛悲劇。
このオンディーヌを初演したマーゴット・フォンティーンのイメージは非常に有名です。 今回タイトルロールを演じたのは[タマラ・ロッホ&ジョナサン・コープ]、[アリーナ・コジョカル&フェデリコ・ボネリ]、[吉田都&エドワード・ワトソン]の3組。
衝撃的なオンディーヌ デビューを果たしたのはアリーナ・コジョカルでした。 第1幕−自分の影と戯れるシャドウ・ダンスで魅せた子供のような無邪気な姿、ぴちゃぴちゃと水しぶきが見えるようなはじけるステップや喜び溢れるジャンプ、
まるで海を駆け巡る小さな魚のようなすばやい動きと愛らしさが非常に印象的でした。フェデリコ・ボネリ演じた騎士パレモンは、どこか現実世界の人間的なイメージを感じさせない、
まさにおとぎ話の絵に描いたようなハンサムで、技術は完璧でした。 |
吉田都 |
吉田都 |
最も印象的なオンディーヌを演じたのは吉田都でした。マーゴからこの作品を見続けているという女性のお話によると、
吉田の踊りにはアシュトンがマーゴに振付けた『オンディーヌ』/マーゴが踊ったオンディーヌのエッセンスが非常に強く見られると言うことです。
私自身、今回の再演以前にはサラ・ウィルドー演じた『オンディーヌ』しか観た経験がないので、アシュトン・バレリーナが演ずる『オンディーヌ』を語ることは出来ませんが、
確実に吉田の踊りにはアシュトンのムーブメント、音楽性、そして『オンディーヌ』というおとぎ話の物語性の3つが最も自然な形で調和されているように思えました。
マクミラン作品を思わせるような激しい情熱・感情表現やテクニックが先行してしまう舞台では、「作品」を観ていると言うよりも、ある「バレリーナ」を見ているという感覚に陥ります。
それは決してアシュトン・バレエとは言えないでしょう。「作品」に含まれるすべて(コレオグラフィー、ストーリー、音楽、デザイン、バレリーナ…)に感動することが出来るというのが、
アシュトン・バレエのひとつの特徴のように思えます。吉田演ずるオンディーヌはとてもチャーミングでロマンティック、そして妖精の持つどこかミステリアスな魅力に溢れていました。
繊細なフットワークはまさに人魚の尾びれを思わせ、溶けるようなしなやかなアームスには水の妖精のスピリットを見るようでした。 グラン・ジュッテですらまったくポアントの音が聞こえない驚くべきコントロール力はまさに非現実的で霊的なイメージを高めました
(一方、パ・ド・ブレや袖から歩いて出てくるだけでもポアントの音が鳴り響くコジョカルのポイントワークには、何か改善方法はないものかとがっかりさせられました)。
エドワード・ワトソン演じるパレモンはどこか陰のある、最後の悲劇を初めから匂わせる役作りが印象的でした。 |
ファースト・キャストだったタマラ・ロッホ&ジョナサン・コープ組みでは、おとぎ話と言うよりは現実の恋愛悲劇的な印象を受けました。
タマラ・ロッホ演ずるオンディーヌは瑞瑞しい乙女であり、心の底からあふれ出る喜び/悲しみの表現はあまりにも情熱的なためにそこに妖精的イメージを見出すことは出来ませんでした。
ファースト・キャストで地中海の王ティレニオを演じたリカルド・セルベラのまさに大波を起こすようなハイスピードなピルエットやラインの鮮明なジャンプ、 波を思わせるしなやかな背中と支配力のあるアームスは、パレモンに対する強い嫉妬や怒りを的確に表現しており、非常に印象的でした。
その他には第3幕のコロンビーヌとハーレクインを思わすディベルティスマンを踊ったホセ・マーティン、ラウラ・モレラ、サラ・ランムが目を見張るテクニックを魅せました。
(2005年4月22日、5月5・13日、ロイヤル・オペラ・ハウス) |
タマラ・ロッホ
ジョナサン・コープ |
タマラ・ロッホ(オンディーヌ) |
リカルド・セルベラ(ティレニオ) |
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