2003年の没後10年のメモリアル・イヤーに際して、マクミラン作品の上演が続いています。マクミランの3大劇的バレエの一つ『マイヤーリング』は、19世紀末のオーストリア=ハンガリー帝国のルドルフ皇太子とベルギー王女との政略結婚、そして17歳の愛人マリー・ヴェツラとの心中に至る苦悩に満ちた人生を描いた作品。マクミラン・バレエのドラマ性の高さはどの作品にも共通しますが、この作品では格別に時代的背景、宮廷社会の厳格さ、政治的な複雑さ、そのなかで退廃的に生きた不幸な皇太子の心情と人生が濃密に描写されています。『眠れる森の美女』などのおとぎ話の世界や、バランシンに代表される抽象バレエとは異なり、このような作品では、バレエのヴォキャブラリーを通して、いかにドラマ性を表現するかが注目されます。
今回、4キャストが発表されていますが、初日はタマラ・ロッホ&ジョナサン・コープ、2日目はアリーナ・コジョカル&ヨハン・コポーでした。コープは、これ以上はないと言われるルドルフを演じ、観客と評論家に絶賛されました。コープのルドルフは登場から何か暗い影を感じさせ、気の病に苦しむ姿を完璧に描写し、タマラは官能的でありながら少女の無垢な部分を決して失わないマリーを演じ、観客を魅了しました。完璧な感情表現、ダイナミックでスリルあふれる二人のパートナリングは、この悲劇をいかなる言葉で語るよりも強く観客の心に伝えました。ゼナイダ・ヤノフスキーのエレガンス、荘厳なエリザベート皇后(ルドルフの母)、リカルド・セルベラの切れのある素晴らしいムーブメントに悲痛感がにじみでるブラトフィッシュ(ルドルフの運転手)など、脇役の好演もさらに舞台を盛り上げました。一方、コポーのルドルフは落ち着いていましたが、人物的描写にはどこか物足りなさを感じました。『眠れる森の美女』での怪我が心配されましたが、コントロールされたムーブメント、跳躍でその不安をかき消しました。アリーナのマリーには、女性として成熟したエロティシズムが明白に表現されていました。鳥肌の立つほどのスリルと激しさに満ちたパ・ド・ドゥは、二人の完璧なパートナーシップを証明していました。その他、ローラ・モレラはルドルフへの未練に苦しむラリュッシュ伯爵夫人(かつての愛人)を好演しました。
ほかにも今シーズンは、カロルス・アコスタがルドルフを初めて踊り、彼の演劇的役柄への挑戦は印象深かったと評されました。6月のイレク・ムハメドフのルドルフ復帰も期待されています。
『マイヤーリンク』は、ロイヤル・バレエの演劇性、芸術性の高さを十分に味わうことができる作品の一つ。こうした素晴らしいロイヤル・バレエの財産を生かした作品のさらなる上演が期待されます。
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「マイヤーリンク」ジョナサン・コープ

「マイヤーリンク」
タマラ・ロホ、ジョナサン・コープ

「マイヤーリンク」
タマラ・ロッホ、
ジョナサン・コープ
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