関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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白井剛、川口隆夫、藤本隆行による『true/本当のこと』

 舞台下手に長方形のテーブルがあり、ポットやコップ、ルービックキューブなどの日用品と、表面に半透明の白い幕を貼ったような地球儀、飛行機のプラモデルなどが置かれている。地球儀の奇妙さ以外は、ありがちな男の一人部屋といった風。
 タバコを吸った時、あるいはカフェインを吸収した時に脳に発生する感覚、人間の想像力が規定している日付変更線・・・などなど様々な現実と存在の落差についてのナレーションが流れつつダンスが進行する。

 グレーのジャージを着た白井剛が、コップの水を飲むといったごく日常的な動作を行うと、その動きに反応して激しい重低音が響いたり、まったく反応しなかったりする。動きと音の関係は、規則的なのか、不規則なのか、無関係なのか、白井は確認することができない。
 舞台の両袖にはパイプで組んだ足場があり、真っ赤なコートを手にして動き回る川口隆夫が音を操作しているのか。
 さらに、テーブルのコップがひとりでに移動したり、音と光りが縦横にめまぐるしく走り、地球儀に映像が映ったり、突然、テーブル板が大小の円形に抜け落ちたりする。
 生活感のある小道具ではなくオブジェが散乱し、まるでホラー映画のオープニングのように混乱し緊迫した空間が現れる。しかしそれは、ダンサーの身体にセンサーを付けて、筋肉の動きと音や光りが連動するプログラミングがなされて現出したものだ、という。
 ただ観客にとっては、フロアに日用品のオブジェが散乱し、真紅のコートが飛び交う様は、なかなか美しく構成されたカオスとも感じられた。
 ソフトで柔らかな存在感の白井と、ハードで力強いインパクトの川口が、コントラストを際立たせつつ、現実と存在の落差との格闘技とも呼びたいような展開をみせた。

 白井剛(振付・演出)とダムタイプの川口隆夫(振付・テクスト・出演)、藤本隆行(ディレクション・照明)が創った舞台である。
(12月14日、横浜赤レンガ倉庫1号館)
「true/本当のこと」

未國による『幻夜ノ戀(まぼろよのこひ)』

「身体、声、リズム、音、そして異形の物語」を創るというグループ未國が『幻夜ノ戀』を上演した。

 第一部は「卒塔婆小町」。山田茂樹が扮する落ち武者のような襤褸の鎧を纏った男が、舞台に設えた台座に立っている。アイスホッケーのゴールキーパーの金ぴかの面を付け、傍らにはスティックまで置いている。ここは死の国、冥界に渡る前の踊り場だという。
 圧倒的な声を駆使した前川十之朗の謡そして演出・脚本・音楽、前田新奈の振付、大久保智子の謡と三絃、そして太鼓とキーボードが響く。
 前川と大久保の謡が、「卒塔婆小町」の物語を語り、山田のソロが凄絶に男、そして純白の襦袢を纏って女を踊る。シェイプアップされた身体が躍動し、落ち武者の扮装が強烈。ホラーな面を付けるまでもなく、この扮装だけで、日本人のアルカイックな心象に充分に訴える。
 前川の謡は、「百夜通い」の恋物語だが、素晴らしい声が圧巻。楽隊の演奏は今様だが、和のリズムを紡いだ。ヴィジュアル、リズム、声、ストーリーとどれにも「プリミティヴな感性」を強烈に刺激された。能をミュージカル化してみせるかのような舞台だったが、今は絶滅してしまった浪曲的な世界の一部に触れた想いがして懐かしくなった。

 第二部は、「歌舞俗謡」。神話や民謡あるいは原初などを題材とした謡と楽隊の曲に乗って、前田新奈振付のダンスが展開する。情念に狂う異形の美をみせる振付が多く、前田と桑原文生の踊りが印象に残った。
(12月8日、六本木 オリベホール)
「卒塔婆小町」

名倉ジャズダンススタジオの「井上堯之を踊る」

  名倉加代子のジャズダンススタジオの定期公演「Can' t Stop Dancin'」は、いつも青山劇場で開催されている。しかし名倉は、観客に息遣いまで伝わるようなもっと小さな空間で、<こころを踊る>ダンスを上演したい、と願っていた。
 そして、様々のキャリアを重ねて円熟の時を迎えたスタジオのメンバーと、若いダンサーたちによる
<こころを踊る>「スパーク×スパーク」公演がスタートすることになった。

 第1回目は、グループサウンズ<スパイダース>のメンバーとして、解散後もギタリストとして活躍する井上堯之とのコラボレーションとなった。
 2部構成で、第1部「ラプソディ」には、井上堯之の曲で綴る男と女の物語、というサブタイトルが付いている。
<月と太陽、百合とひまわり>くらいにキャラクターの異なった二人の女性ダンサー、鈴木レイ子と橋本さとみ、さらに中村しんじをゲストに迎えて構成されたダンス。歌と踊りで描く二人の女と一人の男の物語を、井上堯之の人生観を滲ませて語っていく、瀟酒なダンス・ドラマだった。  第2部は、「Takayuki on Stage」。井上の弟子で、作・編曲家、ギタリストとしてTVや舞台で大活躍の長谷川雅大とのギター連弾「Open Your Eyse」で開幕した。そして、次々と井上の曲が流れ、ダンスが踊られて行く。
 ダンスのスタイルも組み立ても、フォーメーションもじつにヴァラエティに富んでいて感心させられた。
 気心の知れた一座が、歌って踊ってギターを奏でるじつに楽しい、魅力的な一夜だった。
(12月14日、草月ホール)
名倉加代子 井上堯之

Bugs Under Groove『バグズグバ2007〜これでもか!!』

 浜崎あゆみ、SMAP、安室奈美恵などの人気アーティストの振付師やバックダンサーなどを務めていた男性ダンサー6人が集まって結成したグループBugs Under Grooveが、東京、大阪、名古屋で公演を行った。
  今回、6回目を迎えた「バグズグバ」シリーズで、リーダーのTETSUとサブリーダーのTAKAが構成・演出した『バグズグバ2007〜これでもか!!』と言うタイトルが付けられている。

 舞台全体にバラエティとしてはじつに手慣れた構成で、軽いギャグや楽しいダンスがタイトル通りぎっしりと盛り込まれていて、この上なく楽しいエンタテインメントになっている。シリーズ公演だけに、ファンもしっかり付いていて、和気あいあいのいい雰囲気の公演だった。
 ダンスは細かい動きがなかなか魅力的で、それぞれのシーンがやや短いようにも感じたが、群舞は日本人らしいいいリズムを作っている。ソロの見せ場も増やして欲しいとも思った。スパニッシュ風のダンスはあったが、ダンスのスタイルとしては民族風のものやアフリカンやカビリアン、ポリネシアンなど、もう少しジャンルを多くしてもいいかもしれない。また、ストーリー性というか具体的な設定を前面に出したショーを加えるてもいいのではないか、と思われた。

 それにしても、7時から15分休憩で9時40分まで、ダンサーたちが観客席を行き来するサービスも含めて、みっちり詰め込んだ構成はファンにはたまらなく魅力的だろう。
 これからは、さらに大胆に積極的な舞台を創って、日本の新しいショーを創る気概で、ダンスシーンを引っ張って行ってもらいたいと思った。
(11月28日、シアターアプル)

 

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