| 佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki |
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。
|
 |
|
東京バレエ団『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』
東京バレエ団が、『白鳥の湖』(ゴールスキー版)と『ドン・キホーテ』(ワシーリエフ版)という
人気の演目を相次いで上演した。特に前者は、昨年の「世界バレエフェスティバル」で絶妙な演技を披露したペア、ポリーナ・
セミオノワとフリーデマン・フォーゲルによる日本で初の全幕共演とあって、注目度は高かった。ボリショイ・バレエ学校出身の
セミオノワは、ベルリン国立バレエ団で活躍する”マラーホフの秘蔵っ子。”一方のフォーゲルはジョン・クランコ・バレエ学校出身で、
シュツットガルト・バレエ団のスター。異なるバックグラウンドの、異なる持ち味の二人だが、そんな個性が意外としっくり溶け合って、
期待に違わぬ舞台となった。
颯爽と登場したジークフリート王子のフォーゲルは凛々しくも、演技は総じて控え目に思えた。第2幕では、
悲哀を滲ませて典雅に舞うオデット役のセミオノワと、真摯に彼女に向き合うフォーゲルが詩情豊かなデュオを構成。第3幕でセミオノワは
妖艶なオディールに鮮やかに変身を遂げたが、決して毒々しくはなく、気品を失うこともなかった。だから、フォーゲルが疑いを抱いたものの、
すぐにオディールに魅せられていったのも自然な流れと納得させた。見せ場の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥでは、二人は高度な技を披露しながら、
それぞれの思いを燃え立たせていった。中でも、セミオノワによる、ダブルを連発させても揺るがぬグラン・フェッテや、フォーゲルの片足
をピンと真横に伸ばしたグランド・ピルエットが目を奪った。第4幕で、王子が倒れたオデットを見て意を決し、悪魔ロットバルトに戦いを
挑む場面では、フォーゲルが迫真の演技で臨み、オデットや白鳥たちが呪いから解かれるハッピーエンドを際立たせた。
バレエ団のダンサーでは、ロットバルトと共に現れる井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲によるダイナミックな
スペインの踊りが、悪魔の魔力まで誇示するようで見応えがあった。道化役の古川和則は達者な回転技で楽しませ、ロットバルト役の木村和夫
は終幕冒頭、力強いジャンプで企みの成就を伝えていた。2幕の白鳥たちの群舞や、4幕の白鳥たちのフォーメーションも幻想的な
美しさをたたえていた。
| 小出領子、後藤晴雄 |
(4月 11 日、東京文化会館) |
『ドン・キホーテ』
こちらは、ボリショイ劇場で活躍したウラジーミル・ワシーリエフが、 2001 年、ゴールスキー版に基づき、
東京バレエ団のために新たに演出・振り付けたもの。次々に繰り広げられる多彩なダンスや、スピーディーな物語展開、生き生きとした
人物描写に振付家のセンスが光っている。今回はゲストを招かず、団員だけでダブルキャストを組んだ。上野水香と高岸直樹のペアは既
にお馴染みなので、キトリ役は初めての小出領子とバジル役は5年ぶりという後藤晴雄のフレッシュ・コンビが主演した2日目を観た。
小出といえば、『眠れる森の美女』でマニュエル・ルグリを相手にオーロラを踊り、『田園の出来事』ではシルヴィ・
ギエムと共演して臆さなかったことを思い出すが、キトリではまた違ったキャラクターが求められる。小出は茶目っ気もみせたが、意志が強く、
少々勝気な娘といった役作りだったが、どこかまだ硬さを残していた。後藤は優しく愛くるしい笑顔を振りまき、ひょうきんさも備えた活気あ
ふれるバジルを全身で演じた。
小出が一つ一つのパを端整にこなし、思い切りのよいジャンプやスピート感あふれる回転技をみせれば、 後藤はしなやかな足さばき、切れのよいジャンプで応じる。芝居のタイミングもぴったり合っており、後藤が小出を軽々と片手でリフトしたり、
軽い放り投げを入れたりすると、小出から喜びの笑みがこぼれた。プライベートなことに触れたくはないけれど、私生活でもパートナーとなった
二人ならではの息遣いに思えたのである。
メルセデスの奈良春夏はメリハリをつけた安定感ある踊りをみせ、若いジプシーの娘の井脇幸江は柔らかな身体を
極限までしなわせて情感を絞り出した。エスパーダの木村和夫は万全な調子ではなかったのか、シャープさが今一つだった。なお、
結婚式のシーンでガマーシュの古川和則やロレンツォの平野玲が回転を競演し、サンチョ・パンサの高橋竜太が舞台を去る際にひょいと
回転技をみせるなど、主にマイムで訴える役にもダンスの場が設けられていたのは、ワシーリエフの配慮だろう。群舞の人々を含め、
それぞれが自分のパートを楽しんで演じていたようで、観ている側も楽しんだ。
(4月 15日、東京文化会館)
|
|