関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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服部有吉と首藤康之のパートナーシップ・プロジェクト「hs06」
国民栄誉賞受賞者、故服部良一の孫で、ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団のソリスト、振付家の服部有吉と、ベジャールやキリアン、ノイマイヤー、マシュー・ボーンなど巨匠振付家作品を踊ってきた国際的ダンサー、首藤康之がパートナーシップ・プロダクションを開始した。
第1回目の「hs06」では、服部有吉の振付・演出による『Homo Science』と『ゴーシュ』が大阪と東京で上演された。
『Homo Science』には首藤康之と服部有吉、およびハンブルク・バレエ団4名の計6名のダンサーが出演。ロボットの実験が繰り返されている部屋の中で起ったロボット同士の軋轢を通して、人間の生命が営む社会のコアをみつめようとした舞台だった。
日々、同じクラスや作品を踊っているハンブルク・バレエ団の5名のダンサーと、今回が始めて加わった首藤では、やはり動きのニュアンスが少し異なる。その点をうまく利用した作品である。
天井のリフトから次々とロボットが実験室に送りこまれてきて、ダンスが始まる。ロボットたちが絡み合い、やがて首藤ロボットが暴走し始め、他のロボットを倒していくが結局自分も倒れ、また新たな実験が始まる、といった展開だった。
何故、首藤ロボットは暴走したのか。質の異なった動きが違和感を生んだのか、単なる製品の不具合いだったのか。私には、他と違った自分に生じたコンプレックスに火がついたように見えた。
服部の振付は、フリースタイルだそうだが、なかなかダンスのヴォキャブラリーが豊富で、淀みなく一気に見せた。首藤は同じ振付の中で、一人独特の感覚を漂わせ、さすがの存在感を示した。
『Homo Science』
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『ゴーシュ』は、宮沢賢治の『セロ弾きゴーシュ』を原作にして、設定を交響楽団からダンスのグループに変えた舞台。クラシック・バレエを他の仲間とうまく踊れないゴーシュが自宅で練習を始めたら、猫や鳥、ねずみやたぬきなどの動物たちが次々と訪れ、ユーモラスな物語が繰り広げられる、というもの。
動物キャラクターの楽しいダンス、生まれ変わったゴーシュが踊る見事なダンスとそれぞれ変化があっておもしろい。音楽はシェスタコーヴィッチからサン=サーンスやジャズなどが使われている。服部のクラシック・バレエをベースとした振付も美しく、たいへん魅力的だった。服部自身がゴーシュを踊り、ハンブルク・バレエ団のダンサーたちと共演した。
服部は今シーズン限りでハンブルク・バレエ団を退団し、カナダのアルバータに移籍するそうだが、次回のパートナーシップ・プロジェクトに期待したい。
(8月3日、Bunkamura シアターコクーン)
『ゴーシュ』
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後藤早知子の ”Sachiko”
後藤早知子が初舞台から50年目を記して、”Sachiko”を上演した。Sachikoが愛したダンス、音楽そして出会った人々への愛のThanks、という言葉がタイトルに添えられている。もちろん、構成・演出・振付は後藤早知子である。
第一部「ヘレン----心の光」は、ラフマニノフの曲を使って、ヘレン・ケラーの伝記をテキストにした4章。2004年に初演した作品の改訂再演である。ヘレンを酒井はな、サリバンを尾本安代、ピーターは森田健太郎が踊った。
オープニングの視覚と聴覚のない世界から、有名なヘレンが水を認識するシーンと、水の精などのアンサンブルを使って上手く表現している。父母やサリバン、ピーターなどとの交流、そして感覚を失ったことによって、逆に見えてくるもの、感覚が備わっているために見えないもの、感じられないもの、が浮かび上がってきて大いに考えさせられるダンスであった。
酒井はヘレンの孤独と愛を求める心を見事に踊った。
第二部は「Love Angel」。ガーシュインの音楽を使って、音と映像と色彩の7つ世界を巡っていくダンスである。女性ダンサーに高部尚子、男性に坂本登喜彦、大天使に西島千博が出演し、Other Dimensionとして能美健志、西祐子とともに「私の踊りある記」を書いてくださっている友谷真実が踊っている。ガーシュインの曲のテンポを速めたり遅らせたりしながら、華麗なダンスと演出が次々と繰り広げられる。天上の宇宙的な意識と地上的な愛が交錯し、大いなる愛の賛歌が謳われているのである。
(8月24日、青山劇場)
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岡本佳津子によるバレエ小劇場
坂本登喜彦、堀登、篠原聖一という「振付家として今後を担っていくであろう三人」を招いて、岡本佳津子によるバレエ小劇場が開催された。
まずはご本人、岡本佳津子の振付による「オープニング」。モーツァルトの有名な曲を使い、明るく明快なきびきびしたステップ、まるで彼女の性格が反映したような気持ちのいいダンスである。背景幕の開き方を意識した女性ダンサーのフォーメーションもなかなか素敵だった。
続いて、坂本登喜彦の振付による『Give』。白い手袋と衣裳にも手のマークが付いている女性ダンサーと男性ダンサーが登場。好むと好まざるに拘らず、人は人とぶつかり、接触し、押し合う、そういう他人の刻印を印した人々と、島田衣子扮する未だ手のマークがついていない人とのやりとり、そんな感じのダンスだった。島田衣子の動きが素晴らしい。柔軟でどんな動きになってもクラシックの形の端正さが崩れない。優れた運動神経で軽々と魅力的に踊っている。フォーサイス作品を踊ったギエムを彷佛とさせた。
「バレエ・コンサート」では、鈴木直美と小林洋壱が『エスメラルダ』のパ・ド・ドゥ、宮嵜万央里と長瀬伸也は堀登振付の『ある日突然!』、堀口純と市川透は『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥを踊った。堀のシンプルでユーモラスな振付が印象に残った。
最後は篠原聖一振付の『LOVE is DANCE』。ガーシュインの曲を使った全11景を、ピンクと黄金色と濃紺のチュチュを着けたダンサーたちが次々登場して踊った。振付はすっきりとして嫌みのない洗練されたものだった。
クラシックとコンテンポラリー・ダンスの創作が2本、パ・ド・ドゥ集、そして岡本の「オープニング」とたいへんバランスのとれた構成の公演だった。
(8月28日、世田ヶ谷パブリック・シアター)
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