関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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『コンチェルト』ほか二作品、小林紀子バレエ・シアター

 近年、ケネス・マクミラン作品をしばしば上演している、小林紀子バレエ・シアターがショスタコーヴィッチ曲の『コンチェルト』を初演した。1957年に作曲されたショスタコーヴィッチのピアノコンチェルト第2番 へ長調の透明で明晰な曲に、クラシック・バレエの革新を目指していたマクミランが、1966年に振付けたもの。
 この年、マクミランが芸術監督に就任したベルリン・オペラ・バレエ団への最初の作品である。
 作品は三つの楽章に分けられていて、第1楽章は速いテンポのパ・ド・ドゥを中心に男女のグループが交錯するムーヴメント。第2楽章はしっとりとした曲調で踊るパ・ド・ドゥ。島添亮子の柔らかいダンスが目を惹いた。第3楽章はリズミカルで明るい曲にのせた大かかりな構成のダンスである。

『コンチェルト』
 コントラストの鮮やかな三つの楽章に、流れるような美しいダンスが展開された。ただ全体的には、振りをなぞっているような印象もうけた。もっと思い切ってアッピールするように踊ってもいいのではないだろうか。

 昨年に続いて再演された『The Invitetion』は、マティアス・セイバーの音楽により、1960年にマクミランが振付けた作品。少女の性的関心から、少年との出会い、周りの人々の好奇心と揶揄、倦怠的な大人のカップルとの関わり、そして自身の中に突き上げてくる衝動、などを経験して大人になっていく姿を描いている。
 今日観ると、60年代的な、現実を取り繕っている人々の心の深奥を暴く、といった印象もうける舞台である。島添がナイーブな少女の痛々しさと明るい楽天的な姿をうまく表現していた。
 そのほかに、ニネット・ド・ヴァロアの『チェックメイト』も再演された。
(7月16日、新国立中劇場)


『The Invitetion』

『チェックメイト』

安藤洋子の演出・振付による『モアレ』

 ザ・フォーサイス・カンパニーの安藤洋子が、同じカンパニーのアマンシオ・ゴンザレスとアンデル・ザバラとともに、新作『モアレ』を踊った。安藤洋子には演出・振付・出演がクレジットされ、他の二人は振付・出演となっている。スパイラルのYoko Ando Projectの一貫で、皆川明がヴィジュアルコンセプトと衣裳を担当している。
 会場には、ダンスのレッスン場の音声が流れている。三人のダンサーはばらばらに登場し、それぞれまちまちに動き始める。レッスン場の音声はいつの間にか音楽に代わっていた。パフォーマンスのプロセニアムがさり気なく取り去られているのである。
 現実と判然と区切られていないステージで、希に交錯することもあるが、ダンサーたちはそれぞれが踊る。それはダンサー三人のそれぞれの個性がごく自然に動きの中に感じられるダンスである。このさり気なさ、ナチュラルな感覚こそが安藤洋子作品の真骨頂なのであろう。
 タイトルは『モアレ』。モアレとはフランス語であったか。かつてダンスの雑誌を編集していて頃には、印刷物にモアレが出ないように願っていた。モアレそのものを嫌っていた。しかし、この自然なダンスの動きの中から浮かび上がる斑紋(モアレ)は、実に美しくかつ魅力的だった。
(7月29日、スパイラルホール)




『Dance × 平山素子』渡辺晃一個展のダンスパフォーマンス

 造型作家の渡辺晃一は、3次元計測機器3-Dデジタイザ<Danae(ダナエ)>を使って、人体の作品制作を行ってきた。渡辺が<Danae>のデジタル画像により、ダンサーの平山素子をモデルにしたインスタレーションを発表。
 平山素子が、その等身大の人口樹脂作品が展示されている画廊で、パフォーマンスを行った。ちなみに、3-Dデジタイザ<Danae>は、撮影の際に、黄金の光を発することから、ギリシャ神話の女神ダナエと名付けられた。また、ダナエの神話は、「男の子は授からず、孫に殺される」という神託を受けた王が、一人娘のダナエを青銅の扉の付いた塔に閉じ込め、男と出会わないようにした。しかし、ダナエの類い希な美しさのため、ゼウスは黄金の雨の雫に姿を変えて忍び込み、ダナエと交わる…、というもの。

 まず、平山の等身大の樹脂像が見事。淡いベージュのポーズをとった平山の姿がそのままあるのだが、その軽さ、重力を感じさせない存在感が、「シルフのよう」といったらいいのだろうか。目にはダンサー平山素子の姿体の像が見えるのだが、客席でダンスを目を閉じて体感している時のような感覚が身体に生じる。存在を感じる時にはあまり意識してはいないと思うのだが、目に形として見えない重力をしっかり感じているのだ、ということを改めて理解した次第。
 その等身大の平山の樹脂像と、ダナエを踊るダンサー平山素子が絡み合って、緊迫した空間が生まれる。密室に閉じ込められたダナエの身体と生命の躍動が交錯。黄金の雨の雫が滴ったのか。平山は自身の像から改めて生れたように、あるいは結晶していた像が動きだしたかのように踊った。像から離れて自律して踊り、クライマックスでは再び像に密着し口づけを交わした…。
(7月17日、銀座・コバヤシ画廊)

Photo:池上直哉
Photo:池上直哉
Photo:池上直哉

 

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