関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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東京シティ・バレエ『カルメン』

 東京シティ・バレエが中島伸欣(台本・演出・振付)、石井清子(振付)の新作『カルメン』を上演した。現代版の『カルメン』である。

 原作ではたばこ工場だが、この作品の設定では製薬会社となっており、カルメンはOL、ホセは警備員である。カルメンが会社の情報を盗んで売る。ホセは魅力に負けてカルメンを捉えることが出来ず、逆に彼女のために濡れ衣を着て上司を殺してしまう。エスカミーリョは花形のシステムエンジニアで、コンピュータのトラブルを鮮やかに解決する。カルメンはエスカミーリョに惹かれ、挙げ句の果てホセの手にナイフが光る、という展開である。
 音楽は、従来のビゼーの「カルメン」と他の曲、指揮者の福田一雄が作曲した曲を加えて編曲したもの。オフィスの中の携帯電話や話し声、酒場などの現実の音も挿入される。自由を生きる女----カルメンを描いているのだが、カルメンという女性自体に迫る、というよりミステリー風のドラマに感じられた。というのも、スピーディな物語の展開を心がけたためか、マイムあるいは身体を使った粗筋の説明が多く、パによって描き出されたものが少なく感じられたからかもしれない。

 カルメンを踊った志賀育恵は、アクティヴな女性の気持ちを一心に踊り、とても好感のもてる舞台だった。
(1月14日、新国立劇場中劇場)


ダンス・シアター・ルーデンスの『Moments』

 岩淵多喜子が主宰するダンス・シアター・ルーデンスの新作『Moments』が上演された。共同振付にもクレジットされた5名(岩淵を含む)の女性ダンサーによる舞台である。
 幕開きは、舞台中央にぽつんと置かれた一個の空き缶。暗転すると5名のダンサーがそれぞれのポジションに登場している。無音の動きがあって、音楽とシンクロする動きになっていく。音楽は、リュリ、シューベルト、ヴィヴァルディなどの曲と激しい蝉の声や列車が走る轟音などが使われた。

 白い砂で床に大きな抽象的図形を描き、それを打ち消したり、白い砂の入った同じ空き缶の砂を1個づつ抜いて砂山を作ったり、その空になった缶を規則的に置いて相似形のオブジェを作ったり、あるいは踊り終えたダンサーたちが横一線に並び、大きな叫び声あげたり、順々に大笑いしたり、スローモーションでくず折れたり、といったさまざまなパフォーマンスが行われた。そしてダンサーたちが去った後には、ちりじりに蹴散らされた砂山、破壊された空き缶のオブジェが、まるで夏の去った公園の砂場ようにとり残された。
 人がそれぞれこころの中に留めているある「モメント」を、舞台に再構成して解体する試みである。形あるものが壊れたり、形成された時間が崩れたりすることに対する情動が感じられた作品だった。

 ただ今回は、前作の『Distance』のような個性的な表現は少なかったのではないか。時間に対する崩壊の感覚は感じられたが、テーマをなぞるような形式的な表現が多かったような気がしたのだが。
(1月27日、横浜赤レンガ倉庫1号館)

 

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