関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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 今年最後の「Dance Cube」の配信です。創刊0号以来、はや36号を迎えましたが、いかがでしょうか。 未だ力およばずの面もありますが、海外公演のレポートなど他では見ることのできない記事をお届けすることもできているのではないか、と自負いたしております。 来年はいよいよ四年目を迎えます。ますます愛され、配信を楽しみにしていただけるメディアに育てていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

●賑やかで楽しかった「ルジマトフのすべて 2005」

 今年の「ルジマトフのすべて」は、キーロフ・バレエからご本人のルジマトフを始め、 ヴィクトリア・テリョーシキナ、アンドリアン・ファジェーエフ、イーゴリ・コルプ、パリ・オペラ座からドロテ・ジルベール、カール・パケット、 スペインからロサリオ&リカルドのカストロ・ロメロ姉弟、アイーダ・バディア、パトリック・ド=バナ、 そしてレニングラード国立バレエ団からはお馴染みのペレン、ハビブリナ、クチュルク、ミハリョフ、シヴァコフの15名が参加した。

 第1部は、テリョ−キシナ&ルジマトフの『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥが締め。 『ばらの精』『ラ・フィユマルガルデ』『シンデレラ』に、ボヤルチコフ振付『竹取物語〜月から来た姫〜』、ドゥアト振付『コル・ぺルドウ』を加えた構成。
 ペレンとシヴァコフが踊った『竹取物語〜月から来た姫〜』アダージオが良かった。最後の幕の月に帰るかぐや姫が帝と愛する心を通い合わすシーンである。 ボヤルチコフが02年に振付けたこの作品は、能や歌舞伎、和歌など日本的な素材や衣装を採り入れている。 このアダージオでは、かぐや姫は白い袂の衣装を、帝は白塗りに髷を付けてはいるが、日本的な情緒に流されることなく、心を込めた静謐な愛のシーンを踊っていた。

 ベジャールの大作『ニーベルングの指輪』でヴォータンを踊って、強い印象を残したパトリック・ド=バナは、ナファス・ダンス・カンパニーのディレクターだそうだ。 自身のカンパニーのバディアとドゥアトの『コル・ペルドゥ』を踊った。 スペインの国民的歌手ボネの歌に振付けられた作品で、走るような速いステップと大きな上半身の動きにキリアン風のアクセントを加え、 ドゥアト独特の情感が浮かび上がってくるような音楽の捉え方が見事だった。
 ジルベールとパケットのオペラ座組が踊ったヌレエフ版『シンデレラ』パ・ド・ドゥも、華麗なテクニックが引き立つシーンで、ジルベールが美しかった。

 第2部は、『ススピロ・デ・エスパーニャ〜スペインのため息〜』。ルジマトフとロサリオ&リカルド・カストロ・ロメロが踊った。 キリスト教徒にグラナダを追われた最後のイスラム王ボアブディルが、山の頂からアルハンブラ宮殿を見てため息をつき、 その頂は「ムーア人のため息」と名付けられた、というエピソードにインスパイアされたダンスである。 ルジマトフはこの地を訪れたロシア人のダンサーであり、彼の愛するロサリオは母なる大地を象徴するような存在。 ムーア人が洩らしたため息に込められた情感を、男と女の愛と別離によって表した。

 第3部は、『エスメラルダ』『海賊』に、エイフマンの『アルビノーニのアダージオ』ペトゥホフの『カルメン』、 コルプが踊ったサン=サーンスの曲を使った男性のソロ『白鳥』ド=バナ振付でヘンデルとアフリカン・ミュージックを使った『カドゥータ・リベラ』が上演された。
 オペラ座のジルベールとパケットは『エスメラルダ』パ・ド・ドゥ。さすがオペラ座と思わせるしっかりした舞台だった。 ペトゥホフの『カルメン』は、白い衣装に深紅の花の髪飾りを付けたカルメンと黒尽くめのホセ。運命的な愛のドラマを簡潔に、象徴的な筆致で描いていた。 クチュルクとミハリョフもよかった。ベラルーシのエリザリエフに師事したパクリタル振付の『白鳥』は、『瀕死の白鳥』と同じ曲を使って、一人の男の心の中の心象を大きく羽ばたく白鳥に託して描いた。 ファジェーエフは『海賊』パ・ド・ドゥをペレンと踊り、作品全体の雰囲気を醸し出すように、逞しく力強くそして美しく踊った。 最後はルジマトフがエイフマン振付の『アルビノーニのアダージオ』を鮮やかに見せた。囚われ人のような人物が、精神的な自由を求めていく崇高なスピリットを描いている。 ルジマトフならではの素晴らしい舞台であった。カーテンコールではルジマトフが『火の接吻』を踊るというサービスぶりだった。
(11月5日、新宿文化センター)

●ラファエル・アマルゴの『エンランブラオ』

 ラファエル・アマルゴは1975年グラナダ生れ。若い頃からアントニオ・カナーレスなど著名なアーティストの公演に参加していた。 97年に自らのカンパニーを立ち上げ、02年に映像やコンテンポラリー音楽を使った新しいスタイルのフラメンコ『ニューヨークの詩人』で注目を集めた。

 今回上演した『エンランブラオ』は、アマルゴ自身が青春時代を過ごしたバルセロナのラス・ランブラス通りをモティーフにして創った舞台である。 旧市街の目抜き通りで観光地でもあるラス・ランブラス通りには、ダンスを踊る若者、ホームレス、大道芸人、エトランジェ、売春婦などが流れ屯している。 「……僕自身かつてここで恋し、傷つき、そして成長した……。ストリートは人を育て、人生を謳う。そこにはまさに”フラメンコの息遣い”が潜んでいるんだ」とアマルゴは語っているが、 『エンランブラオ』は、この大都会の表情に彼のイマジネーションを託して描いた、ダンスと映像と歌で構成された12章である。 「ホームレス」「通りにて」「Sex+money(空気)」「リベルタンゴ」「寛容」「ファルーカ(土)」「苦い四月」「炎」「孤独」「通行人」「水」といった章に分けられていて、 <火・空気・水・地>という四大元素が組み込まれ、象徴的映像と歌とダンスがモンタージュされる。 映像が優れており、舞台のヴィジュアルを洗練されたシャープな感覚に見せた。背景に泰西名画のような深い濃いブラックを表し、ダンサーを巧みに浮かび上がらせた照明が良かった。 ダンスも良かったが、舞台のこくのあるヴィジュアルの演出が決まっていたと思う。

 ラストはアマルゴを先頭に客席を回ったり、大きな風船を飛ばすサービスが観客を喜ばせていた。かつては、新宿のフラメンコレストラン「エル・フラメンコ」で踊っていたこともあるそうだ。やはり日本人へのアピールの仕方を心得ているのかもしれない。
(12月2日、オーチャ−ドホール)

 

 

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