関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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北の国からちらほらと初雪の便りが届くようになってきました。05年もあっと言う間に、『くるみ割り人形』のシーズンがやってきます。 でも、これから日本のダンスは、新しいダンサーや作品がどんどん登場して、もっともっとエキサイティングになっていくことでしょう。 観客もダンサーに負けずに、さらに積極的にダンスを観に出かけましょう。
●『ピンク・フロイド・バレエ』のヨーロッパ・ツアー凱旋公演!
ロ−ラン・プティの『ピンク・フロイド・バレエ』は、1972年マルセイユ・バレエ団により初演されたが、その後2004年に、新たな楽曲が加えられて牧阿佐美バレエ団により甦った。 そして今年9月、プティが生れ育ったパリのシャンゼリゼ劇場、そしてビアリッツ、ガール・デュ・ミディ劇場、バルセロナ、ティアボリ劇場で上演された。 したがって今回の東京公演は、ヨーロッパ・ツアーの凱旋公演である。
ゲストダンサーも初演のリエンツ・チャン、シャーロット・タルボット、マリ=アニエス・ジローに代わって、ルシア・ラカッラ、シリル・ピエール、レイモンド・レべック、スライドが踊った。 ヨーロッパ・ツアーもこの東京公演と同じキャストだったそうだ。
「Careful with that axe, Eugene」
「One of these days」
ラカッラ&ピエール
牧阿佐美バレエ団のダンサーは、昨年の初演では少々ぎこちなさを感じさせたと記憶するが、パリ公演を経て素晴らしい動きを見せた。 恐らくプティのバレエの本拠ともいうべきパリ公演に向けて、緊張感をもってラカッラ、ピエールなどの優れたダンサーとともに集中して踊ったことが、今回の舞台に効果的に現れたのではないだろうか。
『ピンク・フロイド・バレエ』の舞台は、装置や小道具を排して、レーザービームと照明とスモークの効果のみによって構成されている。 言うまでもなく、ロックコンサートの演出方法を大胆にダンス公演の演出に持ち込んだものである。 ハリウッドのミュージカル映画やパリのミュージックホールなどの演出を手掛けて成功を収めた、プティならではの発想と演出・振付というべきであろう。
ダンスは80分間休憩無しで、24名の白いレオタードとタイツの女性ダンサーと上半身裸で白いタイツをはいた25名の男性ダンサーによって踊られる。 そして、舞台上の光の効果とストリートダンスを含むダンサーのムーヴメントが、ピンク・フロイドの曲とともに壮大な美の変幻を描く。
クラシック・バレエを主体とするカンパニーのダンサーたちが、これだけのムーヴメントだけで構成されたダンスを踊り切る、ということは無論それなりの困難をともなうものであったろう。 しかし牧バレエ団が、<ダンス・ヴァンテアン>のコンテンポラリー・ダンスやその他のプティ作品とも積極的に取り組んできた成果が、この舞台にははっきりと感じられた。
とりわけ、柔軟な身体を駆使して完璧な動きをみせたラカッラは、氷の彫像のような比類ない美しさに輝いていた。 また、白いタイツに黒い脛当てがアクセントとなり、素敵なリズム感で踊った黒人ダンサーのスライド。 そして「フィガロ」紙のルネ・シルヴァンに「トラボルタばりに腰を振る」と評され、オープニングとエンディングにソロを踊るなど大活躍だった菊地研のダンスが深く印象に残った。
(10月16日、東京国際フォーラム A)
次のアドレスで菊地研のインタビューがみられます。
http://www.fujitv.co.jp/art-net/
アルタンフヤグ・ドゥガラー
菊地研
草刈民代&レモンド・レベック
スライド&佐藤洋介
●ビントレーの『カルミナ・ブラーナ』を新国立劇場バレエ団が日本初演!
新国立劇場バレエ団の05/06シーズン開幕は、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督を務めるデイヴィッド・ビントレーが、 1995年に振付けた『カルミナ・ブラーナ』。文化庁芸術祭の主催公演だそうである。 新国立劇場バレエ団は9シーズン目を迎えたが、史上初の<オーケストラ、合唱団、ソリスト歌手の共演>になる、という。 それがこの作品が選ばれた要因かもしれない。オーケストラも合唱団も歌手も備わっているのだからフルに使うべきだ、と。それが観客の要求とフィットしていれば、結構なことである。
ダンサーは、主役の運命の女神フォルトゥナがバーミンガム・ロイヤル・バレエのソリスト、シルヴィア・ヒメネスと湯川麻美子、 神学生3は同じくプリンシパルのイアン・マッケイと山本隆之のダブルキャストだった。スタッフは、ビントレーを始め、指揮、装置衣装、照明からノーテイターに至るまで英国側である。
ビントレーはカール・オルフのこの曲を16歳の時に聴き、ダンスにしたいと思った。そして1995年にバーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督に就任すると、すぐに実現している。
ビントレー版の『カルミナ・ブラーナ』大きな特徴は、信仰と愛と欲望の問題を現代風俗の中で描こうとしていること。 運命の女神フォルトゥナに、信仰の世界から呼び出された三人の神学生。さまざまな愛と肉と欲望にあふれた世界を体験する三人の神学生を通して、人間の愚かさと信仰の大きな世界をみせる。
ビントレーはこの作品は「60年代の英国のポップカルチャー」に色付けされている、と言っている。 それはダンスホールやナイトクラブで青春を生きる、若者たちの生態に描かれているのであろうか。 ネオンや大きな布を使った演出のアイディアは、見事だし、黒いタイトスカートを着た運命の女神の造型も鮮やか。 ただ、そうした素敵なヴィジュアルに比べると、ダンス自体の力が少々足りないような気がした。 もっと圧倒するようなダンス自体の高揚感を期待したのだけれど。
(10月29日、新国立オペラ劇場)
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