●木佐貫、上島、二見、近藤作品も踊られた小川亜矢子の「All or Nothing 」
昨年秋に『運命に従う』という自伝的エッセイ集を刊行した小川亜矢子。彼女が主宰する青山ダンシング・スクエアが「All
or Nothing 流れのままに」という公演を行った。
小川亜矢子が今までに振付けた作品が6作、二見一幸、上島雪夫&新上祐也、近藤良平、木佐貫邦子がそれぞれの振付作品を上演した。
小川作品は、トゥシューズを履きクラシック・バレエのテクニックを使っている。アンサンブルを主体としたシンフォニックな作品と、心理描写によるドラマティックな作品が踊られた。
冒頭は『クリスタル・パルティータ』。J.S.バッハの「パルティータ」を使い、9名バレリーナが淡いパープルの総タイツを着け、左手首に同じ色の小さな布を着けて踊った。
菩薩のポーズを採り入れたスタッカートな動きを速いテンポで展開し、ソロ、トロワなどきれいな流れで構成されていた。御堂の中の菩薩たちをイメージして創られた作品である。
『五重奏によるパ・ド・サンク』はシューマンの「ピアノ五重奏」から。5人のダンサーが淡いパステルカラーの色とりどりの薄物を纏って、ピルエットを多用した軽快なムーヴメントを踊った。
ラストは、ショパンの「華麗なる大円舞曲」他による『野火』。新芽をだすために火を放った草原、新しい誕生を描いたリズミカルな構成のダンス。
小川亜矢子全147作の最初の作品として35年前に創られたものである。 |
『サロメ』 |
『裏切り』 |
ドラマティックな作品は『裏切り----The Door』。孤独な黒い衣裳の女の部屋のドアを激しく叩く音から始まる。男がドアから入ってきて葛藤が生れ、もう一人赤い衣裳の女が入ってきて‥‥。
チューダーばりの心理描写とミステリーのような雰囲気もある作品。音楽はブラームスの「弦楽四重奏曲」から、藤堂眞子が黒い衣裳の女を踊った。
『沙絽女(さろめ)』は、まず輝く満月を背景に、そして深紅に染まった月を背景に踊るソロ。月は、よかなあんの首を載せる皿のようである。 音楽はドヴュッシーの「弦楽四重奏」。『ある結婚の風景』は、赤い糸で繋がれた夫婦が陥る陥穽を描いたパ・ド・ドゥ。アレンスキーの「ピアノ三重奏」を使って、井神さゆりと坂本登喜彦が踊った。
小川亜矢子の音楽とダンスのセンスの良さが際立ち、ロマンティックな香りのあるテーマが魅力を放つ舞台だった。
|
そして近藤良平振付の『晴れて不合格』がおもしろかった。ピアニカを持った「近藤先生」と落ちこぼれスクールガールのダンスである。
スクールガール・ダンスはとりたてて珍しくはないが、不合格組のスクールガールばかりのダンスは初めて観た。
<群れと行動>がテーマというが、恐らく、振付家のコンプレックスによって負け組の女の子を捉えている、と思われて興味深かかった。車に轢かれたカエルのバラードが可愛らしかった。
二見一幸はバッハを使った『BWV』で白い清潔な衣裳のダンサーを駆使して滑らかなタッチのダンス。上島雪夫&新上裕也は『…INTO THE BLUE』。 スモークをたいて濃いブルーの衣裳を着けた男女の群舞を中心に構成した作品。小川が主宰した「スタジオ一番街」へのオマージュと新たな誕生をイメージさせるダンスだった。
木佐貫邦子は『K3MN@』。ミニマルミュージックを使い今日風な衣裳を着けた4人のダンサーによるコンテンポラリーな感覚のダンスである。
木佐貫自身と加賀谷香、二見一幸、平山素子(23日は木下菜律子)が見応えのある舞台を見せた。
(4月24日、世田谷パブリックシアター) |
カーテンコール |
●上島雪夫による近未来ダンス『SEVENTH SKIN』
上島雪夫とバンタンによるダンスとファッションのコラボレーション公演『SEVENTH SKIN』が上演された。これはバンタンデザイン研究所が創立40年を記して企画したものである。
衣裳はバンタンの卒業生を中心とした11名の新人デザイナーが、上島の言葉を手掛かりにデザインした。音楽は上島のDECADANCE02,03を担当した松本俊行。
ダンサーは新上裕也(振付も)、原田薫、小沢剛、香港バレエの金田あゆ子、新体操出身の山田海蜂に、海外からニューヨーク・シティ・バレエのディアナ・マクブレティ、
カナダ国立バレエ出身のジョイ・クシキ、ボールルーム・ダンスの西島鉱治、向高明日美、そして上島自身と各方面からの参加が実現している。上島が構成、演出、振付、出演を行なっている。
SEVENTH SKINとは、五感を越えた第六感が纏う皮膚、あるいは七番目の感覚(仮定の感覚)といった意味が込められている。
近未来のマイクロチップによって生かされている男の記憶に残る、タンゴ、霊、ジャズ、ロック、純白のドレスの女などを辿る。
そして記憶が消え、七番目の皮膚の感覚に様々の想いが刷り込まれる‥‥。
ファッションが洋服といった概念を越えて、新しい感覚となっていくイメージを描いたダンスである。
半透明のボックスなどを使って、五感を越えた新たに生まれる「仮定の感覚」を観客とともに体験していく演出だった。
上島がマイクロチップの男に扮し、新上裕也を始めとするエネルギッシュなダンスが印象に残った。
(4月17日、東京芸術劇場中ホール) |